中小企業向けのクラウド会計ソフトで高いシェアを占める、freee(フリー)。煩雑な入力業務を自動化し、経理担当者の働き方を変えようとしている。潜在ニーズをくみ取り、成長サイクルを加速する方法を佐々木大輔代表が語る。

(写真=陶山 勉)
佐々木大輔代表の経歴
1980年9月:東京都生まれ
2004年4月:一橋大学を卒業し、博報堂入社
2006年6月:投資ファンドに参画し、アナリストとして勤務
2007年4月:国内ベンチャーALBERTのCFO(最高財務責任者)
2008年5月:グーグルに入社
2012年7月:freeeを創業
2013年3月:全自動のクラウド会計ソフト「freee」をリリース
2016年3月:freeeのユーザー数が60万事業所を突破
中小企業の生産性が低い理由
  1. 帳簿作成や給与計算などで、非効率な入力作業に忙殺される
  2. 現場の担当者が最新技術にうとく、業務効率化を半ば諦めている

 皆さんには、毎日欠かさず繰り返す「ルーティン(習慣)」がありますか。私の場合は、「freee(フリー)」のロゴが入ったTシャツを着ること。20着くらい、よく似たシャツを持っています。

 服装で悩みたくないだけだろうと思われるかもしれませんが、Tシャツ姿を貫くのには理由があります。最もリーズナブル(合理的)だからです。

 本当はもっとシンプルに、効率よく仕事ができるのに、盲目的に同じやり方を続けている人はいませんか。あなたの会社は、無駄な作業に時間とコストを費やしていませんか。何も変わらないと決めつけて、楽しく仕事をすることを諦めていませんか。

銀行口座などの取引状況を人工知能が分析し、自動的に会計帳簿を作成。入力作業を削減し、効率化を実現

 こうした現状を変革するには、どんな人でも理解できるような、簡単で便利な道具を作る必要がある。これが、私がfreeeを創業したきっかけでした。

 freeeの主力商品はクラウド型の会計ソフト。最大の特徴は、経理に関する入力作業の自動化です。

 従業員の経費や請求書の明細など、企業の経理担当者は毎日、膨大なデータを会計ソフトに入力しています。同じ情報を繰り返し入力することもしばしばです。freeeを使えば、こうした作業を自動化できます。銀行口座やクレジットカードの取引状況を人工知能で分析。例えば、「東京電力」向けの支払いならば「水道光熱費」に分類するなどして、自動的に会計帳簿を作成していきます。これまで苦労してきた作業が、圧倒的に簡単になるわけです。

実家の美容院が発想の原点

 給与計算でも同様です。タイムカードを使っている事業所では、労務担当者が時間を読み取って入力し、明細をプリントアウトする作業が発生していました。当社のサービスを使ってもらえれば、データが全てクラウド上にあるため、面倒な給与計算や労務手続きが「ワンクリック」で完了します。

 作成した帳簿などを基に、企業の様々な業務を自動化していく。これがもう一つの特徴です。

 例えば紙の請求書を受け取った場合。スキャンしてデータとして取り込めば、支払額や支払時期などがクラウド上の会計帳簿に反映されます。すると入出金の確認や、売掛金と買掛金の管理なども自動的にできるようになります。タイムリーに情報を反映させられるので、経営分析などにも役立ちます。

 今から振り返れば、子供の頃の思い出がfreeeの原点なのだろうと思います。私の実家は美容院を経営しているのですが、月末は非常に大変でした。美容師の給料は指名されたかどうかで大きく変わるため、その計算は非常に複雑です。私が晩ご飯を食べている横で、家族が3日間ぐらい帳簿と格闘していた記憶があります。

 社会人として働き出した後も、同じような光景を目にしました。あるベンチャー企業でCFO(最高財務責任者)を務めていた時、チームの経理担当者が1日中、入力作業に忙殺されていたのです。せっかくの時間がもったいないと思い、仕事内容を細かく分析してみると、当時使っていた会計ソフトがボトルネックになっていることに気付きました。請求書を管理するシステムと経営分析の仕組み、決算のために会計帳簿を作るソフトが別々に動いていたため、何度も繰り返し、同じ情報を入力しなければならなかったからです。