社長なのに、保育園のお迎えのために午後7時には社員より先に帰らなきゃいけない。みんなは「帰っていいよ」と言ってくれたのですが、育児も会社も家事も全部中途半端になって、すごく落ち込みました。
私が出産第1号でした。私の後に続く人たちの中には、出産したら辞める人も出てくると思いました。残業があると、早く帰る人との就業時間に大きな差がついて、働く時間に制約がある人は肩身が狭い思いをしたり耐えきれなくなったりする。だから残業を禁止して、午後6時になったら帰ろうと決めました。
経営陣が退社時間になったら声をかけて回ったり、ワークライフバランスについての書籍を配ったり。誰もがずっと働ける会社を作りたいと説得し続け、だんだん定着していったのです。
5時ピタ退社が生まれたキッカケは、2011年の東日本大震災でした。午前9時~午後6時だった就業時間を30分前倒しし、さらに夜道も危ないことから終業30分前の午後5時に帰っていいことにしたのです。
最初はあくまで一時的なルールのつもりだったのですが、社員から5時で仕事がちゃんと終わるのだから、このままでいいじゃないかという意見が上がったんです。
30分の人件費を働いていないのに払うということですから最初は悩みました。でも、「業績が悪くなったら戻す」という条件で継続したところ、大幅に売上高が伸びたのです。今でも売り上げは伸び続けているので、5時ピタも継続しています。
●ランクアップの売上高推移

日本では長い時間働いている人が評価されがちですよね。私もたまたま残業している人を見ると「昨日は遅くまでよく頑張ったね」と、口を滑らせそうになります。そのたびに「ここで褒めちゃダメ」と気を引き締めるのです。気を緩めれば、すぐに残業で売上高を上げようという甘い誘惑に負けてしまいますから。
全社員の残業時間を確認
残業をなくすには、仕事のスピードを上げる合理的な仕組みが必要です。ランクアップでは毎月、必ず全社員の残業時間をチェックして役職者会議で報告します。例えば、イベントがあるなど突発的な理由で残業が発生するのはやむを得ません。それが2カ月以上継続する、あるいはそもそも仕事の量が多いときはどうするか。
その人の業務を棚卸しし、時間内に収まりきらない仕事を整理するのです。業務の進め方の効率化、システム化、アウトソーシング、他の社員に振り分ける。もしくは、アルバイトを雇う、仕事ごとやめる。何としても、残業をしなければならない原因を解消するのです。
業務の棚卸しは、本当におすすめです。どんな会社でも惰性で続いている業務というものが潜んでいるものです。例えば、実際には誰も見ていない数字なのに、毎月リポートにまとめ続けているといった作業はありませんか。
産休に入る社員が多いというと、「大変ですね」と言われます。でも、突然いなくなるわけではなく、6カ月前には分かることです。この場合も業務を棚卸しして見える化することで、どう引き継げばよいか的確に判断できます。
アウトソーシング費用や人件費が増えるのはもったいない。そう思う経営者の方もいるのではないでしょうか。
私は全く逆の考え方で配送やコールセンター、PR業務などの業務をアウトソーシングしています。「餅は餅屋」でプロの方にお任せした方が作業の質が高くミスもない。
社員が残業すれば対応できるかもしれませんが、それでは残業代がかかる上に、カラダが疲れて次の日にモチベーションが下がります。それくらいなら、その作業は多少コストがかかったとしてもプロにお願いしたいのです。
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