「財散人聚」の思想が原動力

 問 技術の面では、企業や大学との共同研究など社外との協業に積極的です。こうしたオープンな姿勢は以前からあったものですか。

 答 「はい。イノベーションに関して、ファーウェイは2つのポリシーを重視しています」

 「一つは顧客のニーズに応じて、イノベーションに取り組むこと。もう一つがオープンな協力関係を築くことです。つまり扉を閉ざしてイノベーションを起こすのではなく、扉を開いて顧客やパートナー、ひいては産業界全体とともにイノベーションに取り組む考えを持っています」

(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)

 問 日本では横浜に研究所を設置しています。ここで日本企業と共同で研究をしているのですか。

 答 「そうです。日本は部品などで多くの優れた技術を持っています。我々はそうした技術を求めて、日本の数多くのパートナーとともに研究開発を進めています」

 問 具体的には日本企業とどのような研究をしているのでしょうか。

 「具体的な研究内容についてはパートナーとの契約もありますので、申し上げることはできません。ただ、幅広く日本で研究開発し、実際の製品に導入しています」

 「日本はファーウェイにとって非常に重要な市場です。通信事業者向け事業、法人向け事業、スマホなどの端末事業のいずれも、今年は非常に良い成果が出ています。知名度も大幅に上がっていると聞いています」

 「日本からの調達額は2014年には約17億ドルでした。昨年はこれが28億ドルに拡大しました。このように調達額が増えているのは、日本の企業とともに技術革新に取り組んだ結果だと思います」

 「例えばジャパンディスプレイ、パナソニック、ソニー、京セラ、住友電気工業、古河電気工業といった企業と長期にわたって協業しています。こうしたパートナー企業との関係は彼らが作ったモノを買うだけにとどまりません。製品を一緒に考え、一緒に作り、一緒に顧客に提供しています」

 問 ファーウェイの特徴の一つとして社員持ち株制が挙げられます。これもグローバル企業になる原動力になっているのでしょうか。

 答 「はい、原動力です。従業員に見返りを与えることは、先ほど申し上げた顧客中心主義や技術革新と並ぶ我々の企業文化の一つです。見返りを与えるとは、すなわち利益を分かち合うことです。社員持ち株制はそれを実現するための仕組みで、これも創業当初からありました」

 「この制度があるから従業員は一丸となって努力する。その結果が利益という形で表れます。その利益を従業員みんなで分かち合うことで、会社とともに成長することができる。一方で創業者の任正非はこの制度のために自らの利益を削ってきたと言えるかもしれません」

 問 創業者は、企業を大きくすることで自分の財産も増やそうとするのが一般的です。任CEOはなぜ、利益を分かち合おうと考えたのでしょうか。

 答 「私が彼の考えを代弁することはできません。ただ、中国には『財散人聚』という言葉があります。財を分け与える者のところに人が集まるという意味です。任はこの言葉の通り、社員持ち株制を採用することで優秀な人材を集め、事業を拡大してきたのではないかと思います」

 問 この考え方が世界中で優秀な人材を集めることにもつながっているのでしょうか。

 答  「ええ、社員持ち株のプログラムには全世界の社員が参加することができます。私はこうした仕組みが、ファーウェイがグローバルで成功する要因になっていると考えています」

 問 株式を上場する考えは全くないのでしょうか。

 答 「今のところありません」

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