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殺虫剤メーカーとして国内にとどまらず、東南アジアなど海外でも事業拡大を急ぐ。カギを握るのが商品力。徹底的にこだわるのは、殺虫剤の容器のキャップ作りだ。それが殺虫剤の効き目を自在に操る武器となるからだ。虫を制すのは薬剤の力だけではなかった。

飼育棟では国内外の蚊を国別、種類別に分けて大量に飼育している(写真=田頭 義憲)

 日本三景の一つ、安芸の宮島を目の前に望む広島県廿日市市。海沿いにあるフマキラーの広島工場に足を踏み入れると、蚊、ゴキブリ、ムカデ、ハエなど50種、300万匹もの「害虫」が出迎えてくれる。殺虫剤メーカーとして国内外に生息するありとあらゆる害虫を飼い、殺虫剤の効能を調べる実験を行っているからだ。

 だが工場見学に訪れた誰もが「ここまでやっているのか」と一様に驚くのは、害虫の飼育棟とは別の建物の中をのぞいた時だという。

 工場の一角にひっそりとたたずむその建屋の中にあるのは、旋盤にワイヤ加工機、レーザー加工機、形彫り放電加工機……。およそ殺虫剤メーカーとは無縁そうな機械ばかりで、建屋の中には工作機械メーカーの工場のような潤滑油のにおいが漂う。

 この工場こそが、フマキラーを特徴付ける。作っているのは金型。殺虫剤の噴き出し口となるプラスチック製キャップを成型するための金型だ。

日経ビジネス2018年11月26日号 60~64ページより目次