国内外で異なる知名度

 Jパワーは日本国内では6番目の規模の電力会社だが、知名度は高くない。今年4月まで、東京電力ホールディングスなど地域の電力会社に電力を卸すことが義務付けられており、業界では黒子的な立場にあったからだ。ただ、海外に目を向ければ立場は一変する。他社に先行して海外展開を進めており、既に世界6カ国・地域で発電事業を展開している。

 例えば冒頭で紹介したタイ。著しい経済成長で不足する電力を補うため、1990年代から発電市場を一部開放してきた。ただインフラの根幹を担う電力事業を、外資が大規模に手掛けるのは容易ではない。実際、欧米系の電力会社が一時殺到したものの、後にそのほとんどが撤退していったという。発電所の用地選定や取得、住人の説得など、多数の利害関係者との複雑な交渉を外資が単独でやり切るのは難しい。

 「カギは信頼できる現地のパートナーと組めるかどうかだ」とJパワーの重堂慶介氏は指摘する。タイに赴任して10年になる重堂氏は現地法人の社長を務める。発電事業は投資回収に何十年もかかる息の長い事業だけに「腰を据え、その国に貢献する覚悟がなければ成功しない」(重堂氏)。

 Jパワーが現地で提携するパートナー企業は、国営企業EGATとの関係が深い。EGATが出資する半官半民の発電会社EGCOと2000年初めに提携し、さらに同社が出資する企業と合弁会社を作り、16カ所の発電所を保有、運営するに至った。EGCOやその出資会社にはEGAT出身者も多く集まる。人と資本、双方のつながりを生かして入札などの情報を効率的に集め、さらに立地場所の選定や住民交渉で協力を仰ぐことで事業を拡大していった。

 「Jパワーは長い間我々に協力してくれた。今も我が国の電力安定供給に貢献している」。EGATのラタナチャイ・ナームウォン副総裁はこう評する。Jパワーがタイ電力業界に深く入り込むことができた背景には、50年にわたって続けてきたコンサルティング事業があった。

63カ国・地域でコンサル事業、6カ国・地域で発電事業を展開
●Jパワーの海外展開
注:各国の発電出力は持ち分の合計
海外事業を拡大
●国内外の発電能力比率

 国策会社として1952年に発足したJパワーの使命は、民間の電力会社では賄いきれない国内電力需要を担い、戦後復興と高度経済成長を支えることだった。基本的にこれ以外の事業を手掛けることは許されなかったが、例外がコンサル事業という名の海外技術協力だった。60年以来、50年間でエンジニアを派遣した国は計63カ国に上り、プロジェクトは350件を超える。

 海外で活躍したメンバーの一人が、現在国際事業本部長を務める尾ノ井芳樹・取締役常務執行役員だ。60年代、アンデス山脈に囲まれた南米ペルーの湖で、ダム建設をサポートした経験を持つ。「空気が薄くて難儀はしたが、標高3800mのベースキャンプで見た朝日は今も忘れられない」。その後もコスタリカやラオスなど新興国の僻地を渡り歩き、各国で発電所建設を支えてきた。