預金残高は地銀下位クラス

セブン銀の設立は2001年。今年で15年がたったが、預金残高は6000億円に満たない。地方銀行で言えば下位クラスの規模だ。支店はゼロ。有人拠点は東京・大手町の本社と、出張所が7つあるだけ。それでも「あのビジネスモデルは本当にすごい。我々には絶対にまねできない」と国内屈指の大手銀行首脳が舌を巻く。なぜか。
一般的な銀行の基本的な収益モデルは、個人や法人から預金を集め、それを原資に企業向けの貸し出しや住宅ローン、有価証券の運用などに振り向けるもので、預金規模や支店数が収益力を左右する。しかしセブン銀は違う。消費者がATMを利用する際に支払う手数料が収益源だ。
例えば、平日昼にセブンイレブン店内にあるATMで、買い物客がメガバンクのキャッシュカードを使ってお金を引き出したとする。手数料108円はいったんメガバンクに入るが、そのうち一部がセブン銀に支払われる仕組みだ。
2016年3月期の経常収益(売上高に相当)1104億円のうち9割以上の1022億円はこうしたATM事業が稼ぎ出す。つまりセブン銀の主な顧客は、冒頭に紹介した新生銀のような金融機関なのだ。支店網を充実したり、預金集めを強化したりすれば、むしろ顧客である金融機関と競合してしまうという立ち位置にある。
その特異性が業績に表れている。
日銀のマイナス金利導入で、国内銀行の収益環境は厳しさを増している。新規の資金需要が増えない中で貸出金利が下がり、有価証券運用の利回りも低下傾向が続いているためで、2017年3月期は株式を上場している地銀・第二地銀の大半が前の期に比べ減益を見込んでいる。
一方、セブン銀の2016年3月期単体純利益は前期比6.7%増の261億円。2017年3月期も増益予想で、5期連続の最高益更新を見込む。ほとんどの金融機関にとって足元の金融環境は逆風だが、セブン銀にはさほど悪影響を及ぼさない。
収益性も圧倒的に高い。2016年3月期のROE(自己資本利益率)は約14%で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(約6%)や三井住友フィナンシャルグループ(約7%)、みずほフィナンシャルグループ(約8%)に倍近い差をつけている。
セブン銀は貸出業務をほとんど手掛けていない。メニューはカードローンしかなく、個人向けの主力商品として各行がこぞって力を入れている住宅ローンすら扱っていない。「ATMを通じて入ってくる手数料で成り立つ銀行」という構想自体、銀行の常識では考えられないものだが、親会社のセブン&アイ・ホールディングスから見れば、銀行設立は自然な流れだったようだ。「セブンイレブンで何ができたらうれしいですか」。利用者のニーズを掘り起こす定期アンケートで、「銀行取引は常に上位に入っていた」とセブン銀の舟竹泰昭副社長は言う。
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