食品メーカーを技術で支える

 例えば、コンビニなどで売っている冷麺類に「ほぐし水」が添えられていることがよくある。かけると、麺がほぐれて食べやすくなる。この効果は水ではなく、麺の表面の「ソヤファイブ」によるものだ。大豆の「おから」から同社が作った水溶性大豆多糖類で、米飯や麺類の水分を保持し、粘りを抑える働きがある。それまでは麺どうしがくっつくのを避けるために、ひと口ごとに小分けにしていたが、その手間が不要になり、生産性が上がった。

 おにぎりの場合も水分を1割強多くできるので、生産個数が増やせるうえ、食感も向上。でんぷんの老化が抑えられることで、冷蔵したり時間がたったりしてもおいしく食べられる。

 このほか、「手に付かず口中ですっと溶ける」チョコレートや、輸送中に形状が崩れにくいクリームなど、メーカーやコンビニの細かい要望に応えることで、製品のコモディティー化に苦戦する油脂メーカーの中では飛び抜けて高い利益率を確保している。

BtoC企業並みの高い利益率
●取引先、同業他社との比較
BtoC企業並みの高い利益率<br />●取引先、同業他社との比較
注:円の大きさは総資産の比率を表す。決算期は2016年3月期、山崎製パンのみ2015年12月期を使用
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 中でも大きな収益源はチョコレート。原料のカカオバターの代替となるチョコレート用油脂(以下CBE)では国内トップシェアで、世界の3大メーカーの一角を占める。CBEを原料にした業務用チョコレートも生産しており「チョコの販売高では、コンシューマー向け3位の江崎グリコと並ぶ規模と推定される」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の角山智信シニアアナリスト)。

 油脂の原料調達の関係から海外展開も早く、1981年にはシンガポールで現地生産を開始。最近始まった、日本の菓子メーカーのアジアへの工場進出に先駆ける形になっている。2015年6月にはブラジルの業務用チョコレート最大手ハラルドを約240億円で買収した。アジアと合わせて、新興国の需要拡大を見越し「オセロ盤の角に石を置いた」(不二製油HDの酒井幹夫常務・最高経営戦略責任者)格好だ。

 BtoBという業態のため、社名が表に出ることは少ないが、同社は、コンビニや、数多くの日本の食品メーカーにとって、なくてはならない黒子であり、隠れた高収益企業なのだ。

最後発からもがいて武器磨く

 不二製油HDの前身である「不二製油」は、1950年、伊藤忠商事系の繊維商社の蚕糸会社から分離した、植物系の油脂メーカーとして創業している。

 同業には戦前からの大企業が多い中、最後発で、菜種や大豆などの主要原料は先発組に押さえられて手に入らず、当時あまり日本で使われていなかったパームに目を付けた。しかし、多様な油脂が混じるパーム油から、必要な成分を分離するのが難しく、試行錯誤を繰り返した。これが、同社の「分ける」技術を鍛えることになる。

 製品はできたが、ブランド力の無さからBtoC市場では売れない。そこで油を大量に使う米菓メーカーに「熱安定性」「油ぎれ」という“性能”で売り込みに成功し、発展の足がかりをつかむ。

 こうした創業時の経験が「新しいモノを開発して市場を切り開く、という我々のDNAになった」とCTO(最高技術責任者)の前田裕一常務は語る。研究開発に注力し続けた結果、食品化学分野での国内特許取得件数(2014年)は97件と「全体の4%で、日本一」(同)。

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