世界中のスポーツ店にはナイキなど巨大ブランドの製品が並ぶ。何もしないと、埋もれてしまう。小兵・デサントの危機感は強い。ニッチな競技、小さな市場。徹底した戦略が好業績を支えている。
リオデジャネイロオリンピックが開幕した。陸上のウサイン・ボルト、テニスの錦織圭…。注目する選手は人それぞれだろうが、社員が「トライアスロンのスイス代表、ニコラ・スピリグでしょ」と言う。それがデサントだ。
今回のオリンピックで同社はトライアスロンスイス代表の他、日本代表ゴルフチームや韓国体操代表チームと公式ウエアサプライヤー契約を結んだ。さらにカヌーや馬術、フェンシングなどにはトレーニングウエアを提供している。メジャーとは言い難い競技が多いが、「競技人口が多い種目で戦っても米ナイキや独アディダスなどには勝てない。得意とする分野に絞り勝負するのがデサント流だ」と石本雅敏社長はニッチトップ戦略を標榜する。
スポーツ用品はブランド力がものを言う。デサントは小兵の策として競合がひしめく市場はあえて避ける。それがオリンピックでのウエア提供でも徹底されている。連結売上高が1000億円を超えたのは2014年3月期。3兆円を超すナイキ、4000億円台のアシックスには遠く及ばないが、収益力は年々向上している。2017年3月期の売上高1380億円、営業利益は104億円に達し、どちらも過去最高を見込む。
デサントが転機を迎えたのは1998年だった。それまでアディダスと28年間にわたって結んできた国内販売ライセンスが終了。当時、売上高のほぼすべてを国内に依存していた同社は、売上高の4割を一気に失うという存亡の危機に立たされた。撤退の影響が年度を通して出た2000年3月期には最終赤字に転落。主力工場は生産調整を余儀なくされ、希望退職者の募集にも動いた。冬の時代である。
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