売却「絶対にないことはない」

 売却の可能性はないのか。ユニー・ファミマHDの高柳浩二社長に本誌が聞くと、こんな答えが返ってきた。

 「先の話は、もちろんいろんな可能性はある。絶対にないとか、そんなことはありません」

 もちろん「まだ統合から半年で、いまは正解を一生懸命探している段階」と付け加えはした。だが高柳社長の言葉から浮かび上がるのは、グループの成長にとってGMSが悩みの種であるという状況が、統合交渉を進めていた2年前から変わっていないという現実だ。

 JPモルガン証券の村田大郎シニアアナリストは「雇用や不動産契約の問題があり、即時撤退というわけにはいかない。あとは業態転換などいかに軟着陸させるかを考えるしかない」と話す。であれば、閉鎖を進めるにしても新しい事業モデルを考え出すにしても、まだ時間がかかる。その時間を稼ぐ意味でも重要なのが、統合の最大の目的だったコンビニ事業の基盤固めだ。

 4月19日、東京都新宿区。3月末から改装工事に入っていたサンクス西早稲田店が、ファミリーマート西早稲田店として新装開業した。「ここ、ファミマになったんだ」。通りかかりの女性がそうつぶやいて、入店していった。

 ファミマが最優先事項に掲げているのが、サークルKサンクスだった店舗を転換する作業だ。この日だけで、新装開業したファミマは全国で31店。ほとんどがサークルKサンクスからの転換店だ。今年2月までに829店の看板替えを終え、18年2月期も2600店の転換を見込む。現在、ファミマ社員のうち400人が持ち場を離れ、契約書の書き換えや施工業者の手配にあたる。

 ファミマがサークルKサンクスとのブランド統合を急いでいるのは、せっかく成し遂げた経営統合も、ファミマへの一本化なしには規模の経済として生きてこないからだ。

 たとえば商品の質。売り先の店舗数が多いほど、ファミマは商品開発でメーカーの協力を仰ぎやすくなる。

 ファミマにサンドイッチを納入するファーストフーズ(東京都八王子市)は数年前、規模拡大を見越して丸刃スライサーを導入した。「刃を回転させながらあてがうことで、食パンをつぶさずにスライスできる」(藤城昌泰・営業部長)。商品が売れて工場の収益性が高まれば、今後もファミマ商品の質向上につながる投資に踏み切りやすくなる。

サンドイッチを作るファーストフーズ武蔵工場(埼玉県入間市)。具材を挟むのは一つずつ手作業(写真=藤村 広平)

「セブンをまねできる」が強み?

 「下位企業の強みは、上に立派な事業モデルがあること」。ユニー・ファミマHDの高柳社長は4月11日、決算記者会見でこう話した。念頭に置くのは最大手セブン-イレブン・ジャパン。規模を背景に、メーカーを巻き込んで商品の質を磨く。これはもともとセブンイレブンのお家芸だ。

 16年9月に加盟店とのフランチャイズ契約で導入した新パッケージも、セブン式に近づけた施策の一例だ。

 特徴は廃棄する食品に対する補助金を設けたこと。ファミマの平均日販(1店舗あたりの1日の売上高)が52.3万円であるのに対し、セブンイレブンは65.7万円。ファミマは、この差が夕方以降の弁当・総菜の品ぞろえにあるとみる。コンビニの契約では一般的に、売れ残りなどの廃棄ロスは、加盟店が負担する。新パッケージで補助金を設けたのには、オーナーに廃棄を恐れず発注してもらう狙いがある。

 ここで見逃せないのは、ファミマが一方でロイヤルティー(経営指導料)を引き上げた点だ。

 セブンイレブンの場合、ロイヤルティーが高くても既に質の高い商品があるため、オーナーの収入も安定する。だがファミマの商品力はセブンイレブンとは「まだまだ差がある」(高柳社長)。本部負担で流すテレビCMも「9月以降、まだ増やしていない」(ファミマの沢田貴司社長)。ファミマ加盟店のある有力オーナーからは「ロイヤルティーの引き上げが先行している。向こう1〜2年はかなりつらい状況が続く」との声。なかには「本部の試算で、私の収入が減ると分かった。切り替えには応じたくない」と話すオーナーもいる。

コンビニ事業は統合作業が急務に
●中計に盛り込まれたファミマの主な施策
統合作業の負担が重くなっている
●ファミマ既存店の営業成績

 ファミマ本部にとってつらいのは、6000店舗もあるサークルKサンクスとの膨大な統合作業に人手を割かざるを得ず、既存店の日ごろの強化策が後回しになりかねないという事情だ。ファミマはこれまでも東海地方を地盤とする「ココストア」や、「am/pm」などを買収してきた。ただ転換したのはそれぞれ約370店舗、同730店舗と少なく、現場負担は小さかった。前出のオーナーは「地域ごとに打ち出されるキャンペーンが減っている」と話す。経営統合以降、ファミマ既存店の日販の伸び率が振るわない一因といえるだろう。

 しかも、ファミマがセブンイレブンをまねているあいだにも環境は刻々と変わる。セブン-イレブン・ジャパンは4月、最低賃金の引き上げなどで加盟店の人件費負担が増しているとして、ロイヤルティーを一律1%引き下げると表明した。その半年前に引き上げたファミマとは対照的な動きだ。

 セブン式が従来のコンビニ業界で最も成功した事業モデルだったことは間違いない。だが、それをなぞっているだけでは社会の変化に即応できない。これではファミマは、いつまでたってもセブンイレブンに追いつけない。

 今後、いかに「ファミマらしさ」を打ち出していけるのか。カギを握るのが、ユニー・ファミマHDの筆頭株主である伊藤忠商事の存在だ。

 HDの高柳社長、中山勇副社長はいずれも伊藤忠出身。ファミマの沢田社長も、大学卒業後は伊藤忠に勤めた。商社にとって、傘下に小売企業を持つことは販路の確保という利点がある。同じ文脈で、三菱商事も17年2月にローソンを子会社にした。ただこれは、あくまで商社の「都合」だ。高柳社長は2月の就任記者会見で「ユニー・ファミマHDは、伊藤忠にとっては全てのカンパニーと取引を持つ流通インフラ」と話した。消費者置き去りの発想だ。

 今年は伊藤忠がファミマの筆頭株主となってから20年目の節目の年。「商社に使われる」のではなく「商社を使える」存在になれるか。規模を手中にした今だからこそ、商社との距離感がますます問われることになる。

(藤村 広平)