海外展開の優等生と言われたユニ・チャームが、得意のアジア市場で試練に直面している。中国では市場動向を読み違い、東南アジアにも世界のライバルが攻め込む。過去の成功モデルに縛られない変革ができるかどうか。底力が問われる。
「ここまで市場が変わるとは思わなかった」。ユニ・チャームの高原豪久社長は、中国市場の5年間をこう振り返る。同社はアジアで現地生産した安価な紙おむつを拡販してきたが、中国ではEC(インターネット通販)の普及と、日本で生産した商品を好む消費者意識が拡大し続けている。「5年前は(日本製を好む消費は)一過性のものだと考えていた」(高原社長)
過去20年ほど、アジアで現地生産を進めたことで海外事業を拡大できた。だが今回、中国で判断を誤った背景には、こうした過去の成功が大きすぎたという要因があったはずだ。日本からの輸出に出遅れたのだ。2015年には方針を見直したが、失った時間は大きい。
日本製の紙おむつを好む中国の消費傾向は、沈静化するどころか加速。英ユーロモニター・インターナショナルの調査によれば、12年に2位だったユニ・チャームの中国における紙おむつシェアは、16年には4位になった。
売上高に占める海外比率は約6割。食品や日用品といった消費財の分野では海外展開に成功した代表的な企業と言えるが、主力の中国ではシェアを奪い返さねばならない難局にある。
出遅れていた花王が急伸
ユニ・チャームの誤算の背景には、中国経済の急速な変化がある。日本で訪日中国人が大量に日用品を買う「爆買い」が12年ごろに起こり始め、紙おむつも転売目的で大量に売れていた。
この時、中国の都市部では農村から出稼ぎ労働者が流入する一方で、住民の平均所得は急速に上昇。もともと紙おむつは現地では比較的生活水準が高い消費者が購入するもので、利用者が増えたこともあり、中国市場でも転売が横行した。中国生産の商品の店頭価格よりも日本で売っている紙おむつのほうが安いという「逆転現象」もあった。
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