鉄鋼の生産請負は約120年、食品の生産請負は60年以上もの歴史がある。生産ラインの一部を請け負い、顧客の生産性向上に貢献してきた。創業家出身の鴻池忠彦社長はこう言う。「我々の最大の強みは生産工程の中に入っていること。原材料の発注から運搬、保管までワンストップで手掛けられる」。同社はこうした事業を複合ソリューションと呼び、収益上も大きな位置を占めている。

製造やサービスの請負が主力だ
●鴻池運輸の売上高比率(2017年3月期予想)

 昨今は物流会社間の過当競争や荷主からのコスト削減の圧力から物流だけでは、収益を伸ばすのが難しい。これは同社の収益構造を見ても明らかだ。2016年4~9月期で見ると、国内物流事業の利益率は3.9%で、複合ソリューション事業の利益率は8.5%だった。

 こうした背景から、複合ソリューション事業は売上高の過半を占めている。2017年3月期の売上高は前期比5%増の2660億円で、営業利益は7%増の110億円と、4期連続の増収増益の見込みである。

4期連続で増収増益の見通し
●鴻池運輸の業績

 同社の事業全体を支える基盤でもある国内物流事業への投資も続けているが、今後の成長のために特に力を入れているのは、海外事業とサービス請負事業だ。海外は北米やタイ、ベトナムなどで物流事業に注力。サービス請負については一つが空港事業であり、もう一つがメディカル事業だ。

医療、3ステップで事業を拡大

 鴻池運輸のメディカル事業は天野実氏(現執行役員)の社内提案から始まった。天野氏は大きく分けて3つのステップでメディカル事業を拡大してきた。目をつけたのは看護師不足だ。院内の作業を減らす必要があり、その代表例が医療器具の滅菌だった。一般的に手術室の隣に滅菌室があり、そこで医療器具の洗浄や滅菌を行っていた。

 1995年頃から、鴻池運輸が病院の使用済み医療器具を回収し、一手に洗浄・滅菌を引き受ける事業を始めた。工場で一括して洗浄や滅菌などを手がけ、再び病院に返すという仕組みだ。鴻池運輸は滅菌代行サービスへの参入で後発組だったが、この管理システムを同業他社に公開して業界標準としたため、一気に規模を拡大。各社の滅菌事業を買収し、今や全国で10カ所の滅菌工場を構え、約1000の病院と取引がある。また教育委員会を通じて全国で3300校の定期健診用の医療器具の滅菌も行っている。

 2つ目のステップは、院内物流の構築だ。病院ごとの医療器具の需要は読みづらい。患者の数や病状は千差万別で、欠品が出たり、在庫が多すぎたりという事態は珍しくなかった。鴻池運輸は病院内での滅菌工程を受注して空いたスペースに物流センターを設け、院内物流を手掛けていったのだ。

 こうしたプロセスを通じて、天野氏は病院の事情に精通するようになる。「医療医薬品の需要は変動が大きい。繁忙期と閑散期で300%もの差があり、卸会社はピークに合わせて在庫を管理せざるを得ず、投資効率が悪い」と指摘する。そこで、九州の医薬品卸大手に従来より投資を抑制した物流センターの設計を提案する。

 最大の特徴は、作業員の生産性を高める工夫が随所にあることだ。例えば、人が使いやすい独自のピッキングカートを採用したほか、各人の作業進捗が分かる独自システムも開発した。すべての作業員が無線のカードを帯同し、15のプロセスのそれぞれの作業の進捗状況を把握できるようにしている。作業が遅れているプロセスでは赤いランプが点滅し、他のプロセスから作業員が支援に回るようにして、作業を平準化し、生産性を向上させている。

 こうした医療物流システムは、2012年から佐賀県鳥栖市の卸物流センターで、2015年には鹿児島県霧島市の卸物流センターでも採用されている。天野氏はこれを「九州モデル」と呼んでおり、全国に広げることを狙う。また作業進捗の管理システムは、鴻池運輸の一般物流の分野での活用も検討されている。

 この3つのステップはまさに、製造業における複合ソリューション事業の広がりと重なる。顧客の中枢部に入り込むことで、業容を広げ、ワンストップサービスを提供するという鴻池運輸の得意なパターンなのである。

医療機関のニーズに応じ事業拡大
●メディカル事業の広がり

鴻池運輸の滅菌工場で、医療機器を滅菌するところ(写真=北山 宏一)

課題1
看護師不足


解決1
滅菌代行サービス
病院内で手掛けていた滅菌作業を一括受託

滅菌を終え、各病院に医療機器を出荷する(写真=北山 宏一)

課題2
病院内の在庫が多い


解決2
院内物流の構築
滅菌工程を受注し、空いた病院内のスペースを物流センターとした

佐賀県鳥栖市の医療医薬品の卸物流センターでは、人の作業効率を高めている

課題3
物流センターの投資が大きい


解決3
卸物流センターの運営
機械作業を減らして、低投資の物流システムを構築した