運輸という社名にもかかわらず、鉄鋼や食品の製造請負で業績を伸ばす異色企業。次の成長を託すのが、空港や医療のサービス請負事業で、物流会社としてのノウハウも生かす。利益が出にくい状況の物流業界にあって、新たな事業モデルで一つの方向性を示す。

関西国際空港のチェックインカウンターでは、JALの制服を着た社員が対応する

 訪日外国人(インバウンド)が急増する関西国際空港。外国人などを相手にチェックインカウンターでテキパキと手続きをする地上スタッフがいる。日本航空(JAL)の制服をまとっているが、JALの社員ではない。鴻池運輸グループの社員だ。

 社名からすると物流会社を想起させる同社だが、空港業務の請負の歴史は長い。1994年の関空の開港と同時に空港貨物の取り扱い業務に本格参入した。JALが経営破綻した2010年には、JAL系のグランドハンドリング(グラハン)会社の3社を買収し、業容を拡大した。グラハンとは、冒頭のカウンター業務やラウンジ業務のほか、航空機の誘導や荷卸しなど空港での地上業務を指す。

 グラハンにおけるこの数年の傾向は、航空機の小型化だ。以前はジャンボ機が多かったが、近年はLCC(格安航空会社)の台頭や細かな需要に柔軟に応えるという理由から小型機が増えている。大型機は荷物の出し入れなどに機械を使えたが、小型機は形状などが千差万別で、手作業が必要になる。そこで、鴻池運輸は細やかな現場改善のノウハウを生かしている。

航空機に乗り込み、中腰で荷物を一つひとつ取り出す

 1月中旬にグラハンの現場を取材すると、さっそく小型機が着陸してきた。鴻池運輸の作業員たちの誘導に従って航空機が所定の位置に止まると、さっと航空機の下部に作業員が入り、手際よく荷物を取り出し始めた。中腰で荷物を運ぶため、腰を痛めやすい。そこで取り出したのが、運送作業用に独自開発したスライダーボードだ。この上に荷物を滑らせて、持ち上げる作業を減らし、腰の負担を和らげている。

羽田や成田の業務も手掛ける

 鴻池運輸グループは関空で培った実績を生かし、2010年から羽田空港、2013年から成田空港のグラハンを始めた。インバウンドの増加などもあり、2017年3月期の空港業務の売上高は145億円と前期比11%伸びる見込みだ。この数年、労働集約的な業務はどこも人手不足でグラハンも例外ではない。鴻池運輸が業容を広げられるのは、人材確保で先手を打ってきたからだ。

 まず複数の空港を手掛ける利点を生かし、関空のスタッフが成田の支援に回るなど柔軟な人材配置をしている。空港は1日のうちで繁閑の差が激しいため、利用者の多い時間帯限定の契約スタッフも採用している。

 また、採用にも工夫がある。同社は以前からグループ全体で青森県のおよそ30の高校と強いパイプを構築し、人材を安定的に採用している。さらに空港貨物の仕分け作業などでは、外国人実習生を受け入れている。2008年に人材派遣のグループ会社をフィリピンに作った。そこで日本語を習得した約30人ほどのフィリピン人が毎年、日本の現場に来る。多くの企業が人材派遣の会社を通じて外国人実習生を受け入れるが、同社は直接受け入れられるという利点がある。

 複数の空港のグラハンを手掛けることで、成功事例の水平展開で効率も上がり、地方空港のグラハンも手掛けるための準備を進めている。中山英治取締役は「将来的には海外空港も狙っていきたい」と意気込む。

 鴻池運輸が空港業務を伸ばせるのは、同社がこれまで様々な請負を手掛けてきた実績によるところが大きい。1880年に鴻池運輸を創業した鴻池忠治郎氏は運送業の前に、土木建築業などへの人材供給を生業としており、その伝統は創業後にも長く受け継がれている。