アパレル復活の鍵は「商品ストーリー」

「特集 買いたい服がない」(10/3号)

 アパレルの小売りで働いてきた。近年は最新のコレクションを他社にコピーされ、あっという間にオリジナルの100分の1の価格で売られる。若者はSNS(交流サイト)上で安い服をいかに格好よく着こなすかを競うので、高い服に手を出さない。大手企業は顧客の奪い合いの果てに値引き合戦に陥っている。さらに、人手不足のために販売員が複数店舗を掛け持ちし、無人にならないようにするので精いっぱいだ。優れた商品を作ったとしても、その良さを伝えられる販売員はどれだけいるのだろうか。顧客の生活シーンに寄り添い、共感を得られる商品ストーリーを伝える力が、現場には求められているのだが…。

匿名希望(東京都、会社員、45歳)

編集部から

 「共感を得られる商品ストーリー」。まさに取材時に多くの経営者が口に出した言葉です。これがなければもう生き残れない、逆に言えば、ストーリーを語れる企業は今もなお売り上げを伸ばしています。店舗の店員のみならず、EC(電子商取引)における「接客」も重要になっています。「好みのものを選んで買っていってください」というECの世界から進化し、顧客の購買履歴やAI(人工知能)を使って「接客」をしたり、スタイリストが買い物のアドバイスをしたりするサービスも登場しています。どのような顧客体験を通じて、どんなストーリーを伝えるか。いずれにせよ、企業の論理ではなく、利用者の嗜好に合わせた「提案力」が求められる時代になってきています。

/染原 睦美

40代から資格勉強のワケ

「特集 サラリーマン終活」(9/19号)

 若い頃には、出向や役職定年の可能性など考えもしなかった。だが、気付けば合併などで行内での人余りが顕著になってきて、将来への不安から48歳で公認会計士の資格試験にチャレンジし始めた。短答式試験を10回目でようやくクリアし、今年8月に3度目の論文式試験を受けた。勉強は過酷であり、覚悟と目標がないと踏ん張れない。だが、知識が増えると自信につながり、将来への不安が減少する。50代でこんなに勉強するとは思ってもみなかった。

匿名希望(東京都、銀行員、56歳)

編集部から

 特集の最終章で、内館牧子氏のベストセラー『終わった人』(講談社)を紹介しました。主人公は同じ銀行員です。行内で順調に出世を重ねていくものの、50代を目前にして子会社への出向を命じられます。その後、小さな子会社に転籍し、最後はそこの専務として定年を迎えました。まだサラリーマンとして完全燃焼していないと考える主人公は定年後、「終わった人」という周囲の認識とのギャップに苦しむことになります。さながら成仏できない地縛霊のように…。出向を命じられた時点で、主人公は定年後の人生を直視し、準備を始めるべきだったのでしょう。「定年後30年時代」という特集のサブタイトルには、定年後の人生を「余生」と考えるのではなく、「新たな人生=本番」と捉え、真剣に向き合ってほしいとの思いを込めました。これは誰もが避けて通れない関門なのです。

/林 英樹

日経ビジネス2016年10月24日号 120ページより目次

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