元横綱日馬富士による暴力問題で、日本相撲協会は昨年12月20日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、既に現役を引退した元横綱を「引退勧告相当」とし、白鵬、鶴竜の2横綱を減給とするなど一連の処分を発表した。

(イラスト=小田嶋 隆)
(イラスト=小田嶋 隆)

 釈然としない。年明けから昨年末の話で恐縮だが、あんまりな話なので書かせていただく。まず、引退済みの元横綱日馬富士への「引退勧告相当」が意味不明だ。協会のガバナンスを離れた力士へのこの「小芝居」は、結局のところ、自分たちの間抜けさを天下に知らせる結果を招いている。

 白鵬・鶴竜への処分も不可解だ。北村正任横綱審議委員会委員長(毎日新聞社名誉顧問)は「白鵬と鶴竜は事件の発生、進展を抑えられなかった。責任は軽くみるべきではない」と説明している。率直に言って、個人の暴力事件に同席した人間の罪を問う「連帯責任」の発想が、近代人とは思えない。

 というよりも、この処分は協会ならびに横審の感覚が「一億総懺悔」という言葉で戦争責任を希釈拡散してしまったあの遠い時代から、一歩も前進していないことを物語っている。

 1人の兵隊の失策を全員の責任に帰する「連帯責任」の思想は、旧日本陸軍の内部に蔓延していた。これを利用した統治手法が、相互監視や隊内イジメを横行させていたといわれている。

 つまり、連帯責任は、責任感どころか、集団リンチやイジメを誘発しかねないわけで、こんな「見せしめ」制裁で組織の引き締めが可能だと思っている協会のガバナンス感覚は、半世紀遅れていると申し上げざるを得ない。

 さてしかし、本当に悲しいのはこの先の話だ。私は、当初、このバカげた処分が、協会に蟠踞する前近代オヤジや、横審の封建ジジイの脳内から出てきたものだと考えていて、それゆえ、例によって、協会&横審批判の流れで、自分の気持ちを納得させる手続きに入ろうとしていた。ところが、色々と調べているうちに、今回の措置は、協会が「相撲ファン」の声に耳を傾けた結果だったことがはっきりしてきた。実際、ネット上にあふれている声を拾ってみると、モンゴル人力士の台頭を快く思っていない人々の叫びばかりなのだ。