第4次安倍改造内閣について、安倍晋三首相は、10月2日午後の記者会見の中で、「明日の時代を切り開くための全員野球内閣だ」と説明している。

(イラスト=小田嶋 隆)
(イラスト=小田嶋 隆)

 「全員野球」は、かつて野党に転落した自民党で総裁の任に就いた谷垣禎一氏が、党再生のためのスローガンとして掲げたことで名高い。もともとは野球の世界の言葉で、具体的には、特に高校野球の、「スターがいない」「少人数の」「公立の」「戦力の乏しい」チームの戦い方を描写する時に使われることの多かったフレーズだ。

 すなわち「全員で力を合わせて地方予選を勝ち進んできたチームの、個々の選手の力量よりはメンバー相互の結束力の強さを標榜する戦術志向」を意味しているわけで、まあ、平たく言えば「弱小チームのチームワーク」を称揚した常套句だということだ。

 2009年に谷垣氏が、下野したばかりの自民党の総裁としてこの言葉を持ち出した時、自民党は、相対的な立ち位置として弱小政党の立場に置かれていた。その意味で、当時の追い詰められた党にとって「全員野球」は、ほかに選択肢のない必然の戦術であったし、あの時点での特定の派閥に偏ることなく党内のすべての勢力から均等に人材を集めた人事のあり方も、その言葉の目指す理想をみごとに体現していた。

 ひるがえって、この度の第4次安倍改造内閣に、「全員野球」なる形容は当てはまるだろうか。まあ、「これといった力のある主力選手がいない」「チームを引っ張る強烈なキャラクターが欠けている」という意味では、たしかに「全員野球」だろう。無名で経験が乏しいうえにロートルでもある新閣僚の顔ぶれを見るに、この内閣は全員一致で団結しないと、やっていけないはずだ。全員野球は、目標である以上に、この内閣の宿命であると申し上げてよい。