安倍晋三首相とロシアのウラジーミル・プーチン大統領との首脳会談は、この9月のウラジオストクにおける会合で通算22回目になるのだそうだ。尋常な数ではない。それだけ安倍首相は対ロ外交を重視しているのだろう。

(イラスト=小田嶋 隆)

 しかしながら、たとえば両国間の最大の懸案である北方領土問題については、いまだに何の進展も見えていない。

 もっとも、外交は、目に見えている部分だけでは評価できない。テーブルの下でどんな交渉が進んでいるのかは、当事者にしかわからないものだからだ。これまでの例でも、日中の国交回復や小笠原・沖縄の返還のような歴史的な外交成果は、一般国民の目には「唐突」にもたらされたものだった。北方領土も、たぶん、返ってくる時には、突然返ってくるはずだ。とすれば、返還の前兆が見えないからといって、交渉がまるで進んでいないと考えるのはいかにも浅薄な見方なのだろう。

 いずれにしても、プーチン大統領が、北方領土を見せ球にして、わが国から譲歩を引き出すことしか考えていない可能性は、以前から指摘されていた。それでもなお、こちらが誠実に交渉を重ねれば、先方とて、それなりの誠意を見せずにはおれないはずだ、と、そう考えてわが国の側は、粘り強く交渉を続けてきたはずだった。その粘り強さがつまりは22回という数字だった。