米紙ワシントン・ポストの電子版(8月28日付)によると、ドナルド・トランプ米大統領は、6月にホワイトハウスで安倍晋三首相と会談した際「真珠湾を忘れないぞ」と前置きした上で、通商問題の協議を始めたのだそうだ。

(イラスト=小田嶋 隆)
(イラスト=小田嶋 隆)

 びっくり仰天だ。が、過剰反応するのは得策ではない。これまでにもトランプ氏は、握手を求めるドイツのメルケル首相の手を冷然と無視してみせた。英国のエリザベス女王と謁見した折には、女王陛下の目の前に傲然と立ちふさがっている。つまり、トランプ氏の失礼は、彼自身の個性というのか、交渉(ディール)術の問題であって、これをもってただちに国際問題とするのは徒労だということだ。

 問題はむしろ面と向かって「真珠湾」というあからさまな恫喝ワードを発動された、安倍首相の対応だろう。子細に報じられていないが、もし曖昧に受け流したのだとしたら、トランプさんはそれを「服従のサイン」と受け止めたかもしれない。でなくても、両国間の貿易という抜き差しならない問題を話し合う席で、相手方の威圧をそのまま受け止めてしまえば、交渉者としての無能さを示唆することになる。

 もうひとつ気になるのは、このニュースを報じたのが日本のメディアでなく、米国の新聞で、2カ月もたってからの暴露だった点だ。これが本当なら、随行していた日本のメディアの記者は何か気づけなかったものだろうか。

 ワシントン・ポスト紙の報道を受けて、菅義偉官房長官は、29日の記者会見で「指摘のような事実はない」と否定している。外務省幹部のコメントも同様で「確認したがそのような事実はなかった」というものだ。なるほど。日本政府は、日米首脳会談の席上で「真珠湾発言」があったという事実そのものを認めないつもりでいるようだ。