トランプ大統領は、4月5日、就任以来重用していたバノン首席戦略官・上級顧問を、国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーから外す人事を発表した。シリアならびに北朝鮮をめぐる情勢が緊迫するタイミングでのこの唐突な異動は、内外に様々な臆測を呼んでいる。

(イラスト=小田嶋 隆)
(イラスト=小田嶋 隆)

 NSCから外れることでただちにバノン氏の影響力が消滅するわけではない。が、この人事を、トランプ政権内で進行しつつある内紛の兆候と見なす見方もある。注視せねばならない。

 バノン氏の更迭には、トランプ大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏が関与したといわれている。シリアへのミサイル攻撃では、米国人が犠牲になっていない攻撃に米国が対抗措置を取るのは、「米国第一主義」に反すると主張したバノン氏に対して、クシュナー氏は「アサド政権を罰すべきだ」として攻撃を支持し、両者の主張は真っ向から対立していたという。

 結果として、トランプ大統領は、クシュナー氏の助言を入れて、バノン氏をNSCから更迭する決断を下したわけだが、別のニュースソースでは、大統領の長女でありクシュナー氏の妻にあたるイバンカ氏が、シリア攻撃の決断に大きな影響力を発揮したことが指摘されている。次男のエリック氏とスパイサー大統領報道官が、その旨を証言しているのだそうだ。

 つくづく感じるのは、トランプ政権の人材不足ぶりだ。

 政権の中枢で綱引きをしているメンバーが娘や娘婿やニュースサイトの管理人だったりする。つまり、素人ばかりで、外交や政治の専門家がいない。なにより、大統領本人が、政治・外交の仕事に従事した経験を持っていない。こんなことで大丈夫なのだろうか。

 普通に考えて、大統領本人に政治経験が乏しいのであれば、周囲にその道の専門家を迎えるのがマトモな判断だと思うのだが、政権には、その種の人間がほとんど参画していない。

 それもそのはず、トランプ大統領は、既存の政治勢力のすべてに対して「ノー」を突きつけることで支持を獲得してきた人物で、彼が「ノー」と言った相手には共和党の政治家も含まれている。つまり、経緯からして共和党のメインストリームからの協力は期待しにくいわけで、本人も政治の専門家や既存の外交チャンネルを軽視している。

 しかも、重用した素人が、これまた軽率な発言を連発する。バノン氏のNSC離脱が発表された後、ホワイトハウスのスパイサー報道官は、会見の中で「ヒトラーのような卑劣な人物でさえ、化学兵器を使うところまで落ちぶれることはなかった」と述べた。さらに彼は「ロシアはこんな政権と本当に手を結びたいのか、自問すべきだ」とロシアを非難した。