ドナルド・トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長との間で首脳会談が実現するらしい。びっくりだ。「老いぼれ」だの「病気の子犬」だの、子供じみた言葉で罵り合っていた2人の間にいったい何があったのだろうか。導火線の短い人たちであるからこそ、状況次第で気分が変転するものなのかもしれないが。

 今回の米朝首脳会談を、約半世紀前のニクソン・毛沢東会談になぞらえて「歴史的快挙」と持ち上げている向きもあるが、まだまだ、評価を下すには早すぎると思う。

 後の時代の歴史家や研究者が明かしているところによれば、ニクソンの訪中は決して唐突に実現した事件ではない。国務省をすっ飛ばした決断であった点は今回のトランプのケースと似ていなくもないが、ニクソンの傍らにはヘンリー・キッシンジャーという魔法使いのような交渉人がいた。米中国交回復は、実に、その20世紀の怪人、キッシンジャーが、毛沢東の懐刀であった周恩来との間で、綿密な下交渉を重ねた結果としてもたらされた果実だった。

 というよりも、あれだけの大国同士の間で冷え切っていた外交関係が、一夜のうちに回復する道理はないのであって、世に言う「ニクソンショック」は、水面下の交渉を何ひとつ知らされずに、ある日突然、結果だけを突きつけられた日本の立場からの観察結果を言語化したフレーズに過ぎなかったということだ。