3月7日、北朝鮮は自国内にいるマレーシア国民の出国を一時的に禁止する旨を発表した。

(イラスト=小田嶋 隆)
(イラスト=小田嶋 隆)

 最初にこのニュースを聞いた時、私は、にわかに意味を了解することができなかった。あまりにも異例というのか、前例を知らないタイプの出来事だったので、北朝鮮が何を意図してこんな措置をとったのか、狙いをすんなりと読み取ることができなかったのだ。

 自国に駐在している相手国の大使を、強制的に国外退去させる話なら聞いたことがある。逆に、先方に滞在している自国の大使を召還する措置も、この種のやりとりの中ではよくある話で、これも、とりあえずは理解できる。相手国への不快感を訴える措置のひとつ、ということだ。

 関係がぎくしゃくしはじめた2つの国は、そうやって互いに、決まりごと(プロトコル)に従って、緩和したり厳格化したり、開いたり閉ざしたりすることで、交渉相手に外交的な意図を伝えてきた。

 別の言葉で言えば、国と国との関係は、悪化に向かうのであれ改善に向かうのであれ、基本的には、前例を踏まえながら、慣例に従うカタチで、一歩ずつ前に進むのがお約束になっている。そうやって、互いが、一つひとつ手順通りに対応を行う前提になっているからこそ、突然の戦争や、いきなりの断交を避けることができるわけで、そう考えてみれば、2国間関係の中で、唐突に前例がない振る舞い方をすることは、交渉に当たる双方の国にとって、大変に危険なゲームになる。