PROFILE
日本電産会長兼社長。1944年京都府生まれ。職業訓練大学校を卒業。73年に日本電産を創業した。ハードディスク向けから家電・商業・産業用、車載モーターまで事業を広げ、世界有数のモーターメーカーに育てた。
(写真=小倉 正嗣)

「手段と目的を混同した働き方改革には意味がない」

 最近、知り合いの経営者から「どうやって働き方改革を進めているのか」と聞かれることが多い。当社が「2020年に残業ゼロ」を掲げて働き方を変え始めているのを聞いてのことだろう。

 しかし、間違えてはいけない。働き方改革は手段であって目的ではないし、何かのノウハウを使えばできるというものでもない。今の働き方改革ブームは、そこのところを勘違いしている向きが多いように思えてならない。目的は、生産性を上げることではないだろうか。特に長い間、手が着いてこなかったホワイトカラーの生産性改革だ。

 こういうと、すぐに「社員にきつい思いをさせて、その果実は会社が取るのか」と受け取る人がいる。全く違うし、そんなことだと社員の協力は得られない。当社でいえば、昨年秋から始めた削減運動で、残業はほぼ半減したが、人件費が減った分はすべて社員に還元している。一部は賞与に上積みし、残りは教育費その他などに使い、彼らが自分でお金を使わなくても英語などいろんな勉強ができるようにする予定だ。

 企業にとっては、コストはさほど変わらないわけで利点がないように言う人もいる。しかし、そのコスト削減は本当に意味のあることか。ここは、目先の利益より社員の生産性向上を重視する方が将来につながるのではないか。まず大事なのは、そんな「損失」にも耐える経営者の覚悟だと思う。