PROFILE

ジャーナリスト。1956年生まれ。英エコノミスト誌の元編集長。東京支局長を経験した知日派。『なぜ国家は壊れるのか』(PHP研究所)ではイタリアと日本の類似性などを分析。ドキュメンタリー映画の製作も手掛ける。

(写真=永川 智子)

「経営目標の実現に向け、多様性をツールに。性別だけの問題ではない」

 最近、経営幹部や経営学の専門家が頻繁に口にする言葉がある。それは、「ダイバーシティ(多様性)」だ。多様性がいかにビジネスをより強固にし、成功に導くかを熱弁する。しかし本当にそうなのか、疑問を感じる。

 多様性には価値があり、重要だ。しかし大切なことは、この言葉を使う前に、自分たちが「多様性」で何をしたいのかをはっきりさせる必要があるということだ。

 多様な人材を従業員として抱えることで、より新しいアイデアや創造性、イノベーションを得られるし、より顧客の要望を理解し応じることができる。そもそも顧客は多様なので、スタッフもそうであるべきだ。こうした正論にはなかなか反対しづらい。

 学者たちは、多様性のある企業は、そうでない企業と比べて収益性が高いといったことを証明できるが、多様性があるから利益が高いのかその反対なのか、その因果関係は明確でない。収益性の高い企業はより多様性を促進しやすいという見方もできる。

 日本や欧州、北米で「多様性」が多用されるのは、経営チームの男女バランスを改善していくなどの「性別問題」に関してだ。学術的には、男性と女性双方の幹部がいることが多様性を高めることになるだろうが、私自身はそれだけが多様性だとは思わないし、そうあるべきとも思わない。

 異なる国籍や文化、宗教、性的指向など、「多様性」に包含すべき概念はもっとある。そもそも同じ性別の人たちの間でも異なるタイプの人がたくさんいて、それは性別の違いと同じくらいの違いがある。つまり多様性で実現したいことをもっと真剣に考えないと、目的を達成することが難しいのだ。