PROFILE
富士フイルムホールディングス会長・CEO。1939年旧満州国生まれ。63年東京大学卒業、富士写真フイルム入社。2003年6月代表取締役CEO就任。写真フィルムに依存した事業構造を大転換した。
(写真=的野 弘路)

「リオ五輪の活躍に学べ。
入念な準備は創造性と精神のバランスを生む」

 金メダル12個を含む歴代最多となる41個のメダルを獲得したリオデジャネイロ五輪の日本選手団。連日の活躍に多くの国民が熱狂した。私もその一人だった。

 スポーツとビジネスは似ている。共通しているのは、世界を相手に挑む大きな戦いで、最高のパフォーマンスにより、勝利を手に入れることを目指す点だ。これは言うはやすきだが、実践するのは難しい。今回、日本選手団は2つの点で秀でていた。

 1点目は、入念な準備だ。準備の前提となるのが、現状分析。自分たちの強みはどこか。世界のライバルは何に優れているのか。彼らとの戦いに勝つために、どのような事前準備、対策を打たなければならないか──。そのような冷徹な分析を経ることで初めて、独自の作戦、クリエーティビティー(創造性)が生まれる。

 入念な準備が快挙に結びついた好例が、銀メダルを獲得した陸上男子400mリレーだった。個人ではどの選手も100mを9秒台で走ることができない。そんな致命的な弱点を埋めたのが、下方から相手に手渡す独特なバトンパスだった。日本チームはバトンパスのどのタイミングでバトンを渡せば、スピードを落とさずにつなぐことができるかを科学的に分析した。もちろん研究だけでは不十分だ。何度も練習を繰り返し、難しいバトンパスを自分たちのものにした。研究と実践の両立。チームワークで個人の弱点をカバーする見事な勝利だった。