PROFILE
1937年長野県生まれ。肺結核の治療のため高校を中退。58年、寒天メーカーの伊那食品工業に入社、83年に社長就任、2005年から現職。
(写真=陶山 勉)

「IoTや自動運転の時代。
人にしかできない領域に会社の商機がある」

 近ごろ新聞などでIoT(Internet of Things、モノのインターネット)や自動運転といった言葉を多く見かけるようになった。これまで人が担当してきた仕事を機械に奪われるようになった時、経営者は雇用を守るために会社をどう導けばいいのか。会社の永続には、経営者が「遠きをはかる」ことが欠かせない。

 「世界一貧しい大統領」と呼ばれた前ウルグアイ大統領のホセ・ムヒカ氏が今年4月に来日し、話題になった。ムヒカ氏を一躍有名にしたのが、大統領任期中の2012年6月に「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」で披露したスピーチだ。その中で同氏は、残酷なまでの企業間競争で成り立つ消費主義社会に警鐘を鳴らし、「ドイツ人が1世帯に持つ自動車と同じ数の自動車をインド人が持ったらこの惑星はどうなるのか」と問い掛けた。

 特に私の印象に残っている発言は次の部分だ。「私たちは、発展するために生まれてきたわけではない。幸せになるためにこの地球にやってきたのだ」。この発言には大いに賛成する。

 会社の目的は、成長でも利益でもない。それらは手段であって、会社の目的は一人でも多くの人を幸せにすることにある。

 最近、企業で流行している言葉に「コンプライアンス」がある。条例や規則を守ることは確かに重要だが、条例や規則は守るためにあるわけではない。より多くの人を幸せにするためにあるのだ。第2次世界大戦中に外交官を務めていた杉原千畝氏が今も称賛されるのも、そこを見誤らなかったからだ。