PROFILE

富士フイルムホールディングス会長・CEO。1939年旧満州国生まれ。63年東京大学卒業、富士写真フイルム入社。2003年6月代表取締役CEO就任。写真フィルムに依存した事業構造を大転換した。

(写真=的野 弘路)

「経営者には『長期存続経営』の視点が大切である」

 昨今、企業の経営効率を判断する指標として最も重視されているのがROE(Return On Equity、自己資本利益率)だろう。純利益を分子とし、株主資本を分母として計算されるこの指標は、株主資本をいかに効率的に使い、利益を上げたかを評価する指標として有効である。利益率を上げてROEを高めることを目指すのは当然だ。

 しかし、この値を高めようとして分母である株主資本圧縮のために、過度な配当や自己株取得を進めれば経営の安定性を欠くことにつながる。また、すぐにリターン(利益)を生まないという理由で必要な先行投資を置き去りにすれば、長期的な企業の価値を低下させる。

 企業は将来にわたって価値を提供し続ける「ゴーイングコンサーン」でなければならない。なぜなら、現代社会において、企業は機能的で合目的的な最強の組織であり、それ自体が価値の高いものとして存在し続け、発展し続けねばならないからだ。

 また、個々の商品・サービスは、時の経過とともに、改善・改良、あるいは、イノベーションを起こす必要がある。そのため中長期的な技術開発などの投資は必要不可欠だ。それは、短期的には利益を減らすことになり、ROEは低くなる。

 世の中のニーズに合った革新的な商品を将来にわたって生み出し続けるために、企業は常に知恵を絞っている。我々が祖業であった写真フィルム市場の縮小という危機に直面した時も、技術の棚卸しを行い、世の中のニーズと突き合わせて業態の転換を進めた。横軸に技術を、縦軸に市場を置いて整理した4象限のマップに、考えられる自社の商品やサービスを落とし込んでいった。