PROFILE
伊藤忠商事前会長。1939年生まれ。食料分野を中心に活躍。98年に社長就任。4000億円規模の不良債権を処理し業績を回復。アジアへの造詣も深く2010年、民間出身では初の駐中国大使に起用された。
(写真=清水 盟貴)

「国民を不安に陥れるリーダーシップなきエンタメ系トップの罪」

 政治でも経済でも不変の法則が一つある。それは、世の中で変革を起こすには、ヒト・モノ・カネを動かさなければならないことだ。最近では、インターネットの普及によってモノよりサービスが注目されるようになったとはいえ、これらが政治・経済を動かすために必要な3要素であることには変わりはない。

 米国でトランプ政権が誕生して以来、保護主義が世界中に広がっても、ヒト・モノ・カネが国境を越えるグローバリゼーションは止まらないだろう。ただ、この3要素は世界を動かす必要条件であっても、十分条件ではない。もう一つ、不可欠なものがある。それがリーダーシップだ。

 リーダーシップは3要素の「ヒト」に含まれるのではないかという意見もあろう。しかし、3要素はあくまでリソース(資源)であり、その一つであるヒトは具体的には労働者や専門家などだ。一方、リーダーシップは、それらのリソースをどのように組み合わせ、活用するかを決断し、実行する力を指す。このリーダーシップが、今の世界では圧倒的に欠けている。