PROFILE

1942年埼玉県生まれ。66年東大法卒。69年に家業である八百幸商店(現ヤオコー)に入社。85年社長。関東地盤の有力食品スーパーに成長させる。2007年に会長。09年から日本スーパーマーケット協会会長。

(写真=的野 弘路)

「試練のときは遠回りでも初心に戻り答えを導く。仕事の意味を考えてみる」

 順調に行けば、当社は2019年3月期で30期連続の増収増益を達成する見込みだ。ここまで来ることができた最大の要因は、バブル経済が終わった1990年代前半に、抜本的に自分たちの事業を再定義したからだ。

 業績が減速したことを、外部の経済環境のせいにするのではなく、自分たちのスーパーマーケットが時代遅れになっていたという内部の課題を見つける契機にした。小売りやメーカーの想定を超えて、消費者の要求は高度になり商品を選ぶ目が厳しくなっていた。

 それまでの当社は、どこにでもある一般的なスーパーと同じ「コモディティー」路線だった。他社とあまり違いのない商品を、いかに安く売るかで勝負していた。私はこのままでは共倒れになると思い直して、「ライフスタイル商品」と呼んでいる生鮮食品と総菜の質の高さで、顧客を集めるスーパーになろうと明確に戦略を定めたのだ。

 この路線を定めるまでは正直、自分たちの商売に対して、十分な自信を持っていたわけではない。業界で評判になったという店があったら見に行っては参考にしつつ、結局は一生懸命、他社と同じようなことをしていた。「自分たちの店はどうあるべきか」ということをちゃんと考えていなかった。あのままやっていたら、今のヤオコーはない。

 ピンチのときにどうすれば正しい戦略を導き出せるのか。迂遠なようでも、原点に立ち返ることが大切だと思う。

 私はバブル崩壊という転機にあって「スーパーマーケットは世の中に対して、どういう役割を担っているのか」ということを改めて見つめ直した。ライバルとの目先の競争に一喜一憂するのではなく、自社の存在意義が何なのかという本質を考えたのだ。それで行き着いたのが、単なる安さよりも豊かな生活を求める消費者のために、ライフスタイルを提案できる店を作ろうというビジョンだった。