PROFILE

1947年生まれ。慶応義塾大学卒業後、大和証券(現在の大和証券グループ本社)に入社。2004年社長、11年会長、17年顧問、現職。女性活用や働き方改革に先鞭をつけた。

(写真=大槻 純一)

「働く環境や処遇の整備は会社の責務。副業や雇用流動化でごまかすな」

 働き方が多様化する中で、最近「副業」という選択肢が注目を集めている。かつて当たり前だった終身雇用制度が崩れ、将来に対する不安からさまざまな可能性を模索しようとする人が増えているのだろう。一方の企業側も「本業との両立が可能」「本業とは関係のない業種に限る」など、一定の条件付きで副業を認める動きが出始めている。

 しかし、個人的に副業は筋が立たないと思っている。社員には毎日、最高のコンディションで一生懸命働いてほしいと考えているからだ。退社後や休日はゆっくり休んだり、自己研鑚に励んだりしてほしい。いくら本業に差し支えない時間とはいえ、休みを使って働いていたら、そのうち本業にも悪影響を与えてしまうのではないか。加えて「本業に関係のない分野で」という線引きが果たしてどこまでを指すのか曖昧だ。そのうちトラブルが起こったりするのではないだろうか。

 このような話が盛り上がるのは、制度や待遇を整備し、社員に不安なく働いてもらう企業の努力が足りないからではないかと感じている。無駄を省いた経営スタイルを追求するあまり、社員を育てる研修や、働きがいを高める給与体系といったものに経営資源を投入していないように映る。その結果、会社に対する帰属意識が薄れてしまっているとも考えることができよう。

 世論調査などを手掛ける米ギャラップが世界139カ国の企業を対象に従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)を調査したところ、日本は132位で「熱意あふれる社員」の割合が6%しかいなかったそうだ。米国の32%と比べて大幅に低い。日本は以前に比べて株主への利益配分は厚くなったが、従業員に対してはほとんど変わっていない、いやむしろ少なくなっている。