PROFILE

富士フイルムホールディングス会長・CEO。1939年旧満州国生まれ。63年東京大学卒業、富士写真フイルム入社。2003年6月代表取締役CEO就任。写真フィルムに依存した事業構造を大転換した。

(写真=的野 弘路)

「M&Aは有効な手段。『そろばん』を使って考え抜き、実現させる」

 昨今、M&A(合併・買収)が、企業の経営戦略上、一般的になってきた。M&Aは事業成長を加速させる上で、有効な施策である。例えば、富士フイルムにおいても、2000年以降写真フィルムの市場が急激に縮小する中で、事業内容を転換して新たな事業領域で成長するためにM&Aが大きな役割を果たしてきた。

 手持ちのリソースでは不足しているピースを補う方法として、M&Aはそれを補い、かつまた「時間を買う」ことができる優れた手段だ。富士登山を麓からではなく、5合目からスタートするようなものである。もちろん、その企業とのシナジーも含めて、山頂まで登りきる力を備えていることが前提である。

 当然ながら、M&Aは対象企業を手に入れたからそれでいいというものではない。経営者は、なぜその企業を買収するのかを明確にした上で、どのような対価を拠出して、どのような時間軸で実行し、収益を得ていくかを計算し、判断しなければならない。これらを十分考え抜いてこそ、M&Aが企業経営の重要な手段になる。

 富士フイルムホールディングスは今年1月、米ゼロックスを連結子会社化し、富士ゼロックスと経営統合するプランを発表した。世界の市場を二分して互いに協力し合いつつ事業を展開してきた両社の経営統合が、効率性の面からも、将来の成長を実現するという意味でも、両社にとって最良の選択であることは論をまたない。半世紀以上にわたり、お互いの合弁会社である富士ゼロックスを通じて、ゼロックスのビジネスを知っている我々は自信をもって断言できる。

 しかしながらその後、一部のゼロックスの株主から、自身にとってより有利な経済条件を求める主張があり、提訴があった。驚いたことに、経営統合の一時差し止めの判断が裁判所から下され、我々は何か事実誤認があったのではないかと考え、上訴した。株主の利益にかなうかどうかは、株主総会にはかるのが最も適切な手段と我々は考える。