PROFILE
1947年生まれ。慶応義塾大学卒業後、大和証券に入社。企業の上場や増資を多く担い、2004年社長、11年会長、17年4月から現職。女性活用など、働き方改革でも先鞭をつけた。
(写真=大槻 純一)

「『こども保険』を機に少子化対策議論進めよ。企業の責任も大きい」

 自民党の小泉進次郎議員が主導する「2020年以降の経済財政構想小委員会」が、社会保険料を0.1~0.5%程度増やして「こども保険」を導入する構想を打ち出し、話題を集めている。所得制限なしで現行の児童手当に月額5000~2万5000円を上乗せし、幼児教育・保育の負担軽減や実質無償化を図るものだ。

 1989年に合計特殊出生率が過去最低となって大きな話題となった「1.57ショック」。だが、それからここに至るまで抜本的な少子化対策は行われてこなかった。その結果、団塊ジュニアの世代が出産適齢期を過ぎつつあることは、痛恨事だ。

 経済協力開発機構(OECD)加盟国を比べてみると、家族関係への社会支出のGDP比は英国、スウェーデン、ノルウェー、フランス、デンマークなどが3%程度。日本は1.3%にとどまる一方で、高齢者向けの年金や医療向けの支出は大きい。将来を担う世代への投資を増やすべきだという、小泉議員らの構想の問題意識はうなずける。

 社会保険で負担すると現役世代の負担が大きくなる、企業の負担割合が増える懸念があるなど、議論すべき点は残されている。だが、この喫緊の課題において重要な問題提起がなされ、議論の土台ができたことを歓迎したい。個人的には現金給付ではなく、現物給付に重点を置くべきだと考えている。

 過去、インフレが続いていた時期は若者の給料もぐんぐん上がり、子供の教育費用がかさんでも借金することへの抵抗感も少なかった。だが、デフレ経済が長期化する中で、そうしたムードは霧消した。

 女性の社会進出が加速する一方で、社会では核家族化が進み、それにもかかわらず保育所などの整備が追いつかなかった。働く女性に多くの負担がのしかかり、すべてをこなすのは困難という状況に陥った。

 明るい材料もある。若者の結婚願望は強く、平均で2.4人の子供を希望している。これを阻んでいるのは、子供を生み育てるにあたっての経済的な不安が大きいことにほかならない。逆に言えば、ここを解消すれば、晩婚化、晩産化、未婚化の流れを食い止めることができるはずだ。今こそ、少子化に取り組む社会の合意形成を図るべきだ。