PROFILE
ダイキン工業会長兼グローバルグループ代表。1935年京都府生まれ。94年6月に社長就任。2002年6月会長兼CEO(最高経営責任者)、14年6月より現職。ダイキン工業を空調でグローバルトップ企業に育てた。
(写真=太田 未来子 )

「利益は目的でなく手段。自社しかできない活動で継続的に社会貢献」

 最近、ESG(環境・社会・ガバナンス)やサステナビリティーという言葉をよく耳にする。株価や時価総額といった成長性や財務の健全性だけではなく、様々な角度から企業を評価しようというものだ。グローバリゼーションやダイバーシティーが進み、価値観が多様化する中で、企業についても多様な観点から評価するというのは当然の流れだろう。ただ、こうした概念は別に目新しいものではなく、もともと企業経営の根幹を成すものだ。

 そうした考えを持ったのは、30代前半に淀川製作所(大阪府摂津市)で総務課長を務めた経験がきっかけである。フッ素化学事業の拠点である淀川製作所では、「野菜の立ち枯れや変色はダイキンのガスが外部に漏れることが原因だ」と主張する地域の農家との間でトラブルを抱えていた。交渉役として彼らの言い分を聞いてみると、納得できる点も少なくない。作物が被害を受ければ死活問題となりかねない農家の人と補償交渉をしているうちに「企業とは何のためにあるのか」と自問するようになった。

 企業とは本来、「社会の公器」として利益を上げることを通じて、長期にわたって社会に貢献する組織である。利益は企業が社会の役に立つための「手段」であって、決して最終目的ではない。ダイキン工業の場合、良い製品をお客様に提供することで利益を生み出し、税金を納め、雇用を守り、また新しい製品を世の中に出すという事業サイクルを継続することが基本だ。

 一方で、本業の活動だけではできない社会に対する貢献や企業の役割もある。利益の許す範囲で、その企業らしい独自の貢献に継続して取り組むことが重要だ。単にお金を出すだけではない。CSR(企業の社会的責任)担当部署だけが関わればいいというものでもない。トップから社員まで、同じ意識で自ら関わることが求められる。社会貢献の目的や意義を社員が共有しないまま惰性で活動しているようでは、いつの間にかマンネリ化してしまい、本来の目的を果たせなくなる。