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PROFILE

富士フイルムホールディングス会長・CEO。1939年旧満州国生まれ。63年東京大学卒業、富士写真フイルム入社。2003年6月代表取締役CEO就任。写真フィルムに依存した事業構造を大転換した。

(写真=的野 弘路)

「発明だけで世の中は変わらない。企業こそが革新を生む」

 いかに世の中に新しい発明があったとしても、それだけでは社会に価値をもたらすことはできない。発明を社会的価値に変えるためには、企業による商品化のイノベーション(革新)が必要となる。

 産業革命以降、世の中を劇的に変化させた発明がある。例えば電球は、トーマス・エジソンが竹フィラメントを発光させて発明したが、この電球を一般家庭にも普及させるためには、安定した品質で大量生産し、手ごろな価格で提供するという課題を解決せねばならなかった。それはエジソンという1人の発明家だけの力では成し得なかった。先述の課題を解決できる企業の存在があって初めて、ガスではなく電気による明かりという、世の中を変える価値が生み出された。

 自動車では、量産型のフォードT型が登場し、コストを劇的に引き下げたことから大衆に普及し、人々の移動手段が大きく変化した。米フォード・モーターがベルトコンベヤーによる流れ作業など、革新的な生産手法を取り入れたからこそ実現した。社会に大きな価値をもたらすイノベーションを起こしたのは、フォード(企業)なのだ。

 発明は1人でもできるが、イノベーションは個人の力では起こせない。社会を変えるイノベーションにつなぐには、商品の設計、量産、品質管理の技術、それを担う人材、投資を続ける資金力などの要件を備えた企業の総合的な力が必要となる。発明した製品を高品質で大量に普及させる手段がなければ、発明が世の中に価値をもたらすことはできない。