PROFILE
ジャーナリスト。1956年生まれ。英エコノミスト誌の元編集長。東京支局長を経験した知日派。『なぜ国家は壊れるのか』(PHP研究所)ではイタリアと日本の類似性などを分析。ドキュメンタリー映画の製作も手掛ける。
(写真=永川 智子)

「トランプ大統領は自発的な輸出規制を日本に求めてくる」

 大統領就任から約3カ月がたち、米ドナルド・トランプ大統領が政策方針を変化させている。

 当初、ロシアのプーチン大統領やシリアのアサド政権との融和を掲げていたトランプ大統領だが、その方針を転換し、従来の対決姿勢を強めている。一方で、貿易対立が懸念された中国の習近平国家主席とは、首脳会談で友好関係をアピールした。予測不能と言われたトランプ政権の政策は、従来のホワイトハウスの政策方針に回帰しつつある。世界にとっては好ましい動きだと言える。

 ただし、日本政府や日本企業がトランプ大統領のリスクを楽観的に捉えるのはまだ時期尚早だろう。特に貿易については、日本は米国の保護主義政策の影響を受けるリスクがいまだに高い。

その理由は、トランプ大統領の選挙公約の達成度を見れば分かる。現在、トランプ大統領が公約を実現するために必要な法案の多くは、議会で承認を得られていない。大々的に喧伝していた1兆ドル(約113兆円)規模のインフラ投資計画や、法人税減税を柱とした税制改革の議会承認を獲得するのも、厳しさが増している。

 このままでは、ただでさえ低いトランプ大統領の支持率がさらに落ち込むのは間違いない。本人は2020年の再選に自信を見せているようだが、公約を果たせていない現在の状況では相当に危ういだろう。

 手詰まりの状況を打開するためには何をすべきだろうか。定石は、国外に仮想敵を作り出すことだ。国民の不満の矛先を外に向けることで、支持率の浮揚を狙うのだ。シリアのアサド政権の化学兵器疑惑に対する報復措置、ロシアや北朝鮮への強硬姿勢はそれを裏付けているように見える。