PROFILE
1942年埼玉県生まれ。66年東大法卒。69年に家業である八百幸商店(現ヤオコー)に入社。85年社長。関東地盤の有力食品スーパーに成長させる。2007年に会長。09年から日本スーパーマーケット協会会長。

(写真=的野 弘路)

「『裸の王様』リスク 経営者に自覚はあるか。自分の非力を知るべき」

 米トランプ大統領だけでなく、世界を見渡すと強大な権力を振るうリーダーが目立つ。3月にはロシア大統領選で引き続きプーチン氏が圧勝した。中国でも、国家主席の任期上限を撤廃する憲法改正案が可決され、習近平氏の2023年以降の続投が可能になった。

 大国の指導者とは次元が違うが、社長も、組織や集団の頂点に立ち権力を振るうリーダーである。そして、権力が集中すればするほど「裸の王様」になるリスクは高まる。私は母が創業したスーパーマーケットの経営を継ぎ、07年まで22年間、社長を務めたが、部下から本当の情報が伝えられずに判断を誤るリスクを、常に意識してきた。

 社員が働きがいを持って気持ちよく仕事できるかどうか、将来にわたって経済的に安定した生活を送れるかどうか──。経営者は、社員の人生を良くも悪くもできる存在である。しかも一人ひとりの社員の人事異動を決める権限を握っている。だから社員はなかなか、「それは違いますよ」と社長に正面切って反対はしにくい。上下関係を大切にする日本の風土の中ではなおさらだ。

 それにもかかわらず、権力を手にする意味について自覚がない経営者が案外多い気がする。そのような人は裸の王様になりやすく、物事が日々変化する中で、深刻な危機の到来を事前に察知できず組織全体を滅ぼしかねない。

 誰でも自分を戒めるのは難しいものだ。重要なのは、自分が本当は非力な存在であると自覚することだろう。私の経験では、若い時に様々な本を読み、歴史を含めた広い世界の出来事を知ることには大きな意義がある。単に、学業に役立つからとか、知識が豊富になるから、などということではない。人間の生き方を知ろうと努力し、人への優しさを持つことが大切だと思う。