PROFILE
1937年長野県生まれ。肺結核の治療のため高校を中退。58年、寒天メーカーの伊那食品工業に入社、83年に社長就任、2005年から現職。
(写真=陶山 勉)

「人も会社も『生物』。
生き残るすべは他の生物から学べる」

 このコラムを担当して約2年半。今回を最後とさせてもらうことにした。

 私は自分自身を「賢人」などと思ったことはないが、高校生だった17歳の時に重い病にかかり、「生きるとは何か」「人生とは何か」を真剣に考えた。そこから得た教訓は、経営者になってからも生きているように思う。

 英国の欧州連合(EU)離脱決定やドナルド・トランプ米国大統領の就任……。この1年だけでもあっと驚く出来事が数多くあった。混沌とした状況を憂い、会社をどう経営していけばいいかと悩んでいる経営者がいたとしたら、私はこんな言葉をかける。「そんなに急いでどこに行くの?」と。

 ここでクイズを出したい。地球の直径は1万2742km。あなたの目の前には、それを直径120cmまで縮尺した地球儀がある。では、その地球儀で空気の厚さはどのくらいになるか。

 答えは1mmだ。地球を俯瞰したとき、私たちはこのごく薄い層の中にいる。日々の勝った負けたがいかにちっぽけなことか。

 私たち人間も、他の生物や植物と同じように、この限られた空間の中で生きている。チャールズ・ダーウィン氏が著書『種の起源』の中で唱えた「自然選択(自然淘汰)」は、生物の繁殖力が環境の収容力を超えると起こるという。生き残るのは、繁殖に有利な性質を持ち、かつ環境に合わせて変化できる者というのは有名な話だ。