PROFILE
1947年生まれ。慶応義塾大学卒業後、大和証券(現在の大和証券グループ本社)に入社。2004年社長、11年会長、17年顧問、現職。女性活用や働き方改革に先鞭をつけた。
(写真=大槻 純一)

「非正規増加は深刻な問題。生産性上げれば『賃上げ』は必ずできる」

 多くの企業で春闘の賃上げ交渉が始まっている。政府は今年の春闘でどれだけ賃金が上がるかが、国民の経済先行きに対する不安、いわゆるデフレマインド解消のカギを握っているとみている。それだけに、2018年春闘は、例年にない盛り上がりを見せそうだ。

 アベノミクスが目指す、消費拡大による経済の好循環を達成するためにも賃上げは欠かせない。だがここ数年、企業の平均賃上げ率は2%台半ばにとどまる。企業業績が過去最高を更新し続けているにもかかわらず、だ。

 一方、国民年金保険料が毎年値上がりするなど、国民の所得に対する社会保障費の割合、いわゆる社会保障負担率は右肩上がりだ。2%程度の賃上げでは、社会保障費の負担増で簡単に相殺されてしまう。実際、可処分所得は増えるどころか、むしろ減っているのが実態だ。

 加えて、ここ数年の「働き方改革」における残業見直しで従業員の残業代は減っている。残業代は従業員にとって生活給の一部となっていただけに、多くの人は手取りが減ったと感じているのではないか。従業員の努力で生産性は上がっているのに、その「果実」が働く者にほとんど還元されていないのはおかしな話である。

 このような環境下でも、比較的消費が堅調なのがむしろ奇跡に思えるくらいだ。企業は少なくとも、可処分所得の上昇につながるくらいの賃上げを実施すべきだろう。

 賃金が上がらない理由としてよく挙げられるのが、企業がもうけを内部留保としてためこんでいるというものだ。16年度、日本企業全体の内部留保は初めて400兆円を超えた。