PROFILE
1955年生まれ。慶応義塾大学卒業後、城南信用金庫に入社。2010年、理事長。2015年6月より現職。城南総合研究所所長を兼務。東日本大震災後、脱原発を宣言した。
(写真=的野 弘路)

「地球温暖化は天動説。
二酸化炭素は本当に主因か通説を疑う姿勢が必要」

 かつて中世ヨーロッパでは、キリスト教の権威を背景に、狂気の「魔女狩り」が行われ、多くの庶民が無実の罪で火あぶりにされた。また「天動説」が正当とされ、ガリレオなどの学者が弾圧されて中世暗黒時代と呼ばれた。

 翻って昨年12月、仏パリで開催された第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)は196カ国・地域が参加する「パリ協定」を採択した。努力目標とはいえ、「気温上昇を産業革命前よりも1.5度以内に抑える」と定めた成果は大きい。

 今や二酸化炭素地球温暖化説は誰も疑ってはならない通説と化している。しかし温暖化の専門家である気象学者の90%以上は、温暖化の原因が二酸化炭素という科学的根拠はないとしている。COP21こそ、二酸化炭素を悪魔に見立てた現代の「天動説」であり、狂気の「魔女狩り」にほかならないと言えないだろうか。

 今、世界各国は1988年に設立された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が主導して、二酸化炭素の排出規制を進めている。このIPCCについて、一部の研究者などからは「真面目な科学団体とは言い難く、二酸化炭素地球温暖化説を布教する目的で設立された政治団体だ」という指摘も聞かれる。

 温暖化の論拠とされるIPCCのデータは、何度も捏造が指摘されてきた。2009年にはIPCC幹部の「科学的事実よりも情報操作が大切」という大量のメールが流出し、欧米では「クライメートゲート事件」として厳しく糾弾され信用を失った。これらは日本ではほとんど報道されていないが、欧米では広く知られた事実である。

 IPCCが二酸化炭素に地球温暖化の原因を求めているのに対し、多くの気象学者は「地球温暖化ガスの90%は水蒸気で二酸化炭素は主因ではない」「温暖化は1800年頃から現在まで一定だが二酸化炭素は1945年以降に急増していて統計的に根拠がない」と主張している。気候学の世界的権威である米アラスカ大学名誉教授の赤祖父俊一氏は、温暖化は地球の周期的な気候変動の一環であり、現在は1400~1800年の「小氷河期」からの回復期にあるという。

 こうした良心的な研究者の冷静な議論を見れば、二酸化炭素が地球温暖化の主因だと決めつけるのは早計だろう。それでもIPCCの主張に世界各国がなびくのは、気象や資源・エネルギーに膨大な利権がからんでいるからだ。その典型が、二酸化炭素がでないことを売り物とした「原子力村」だ。

 東日本大震災以降も、日米欧の政治家や企業は新興国に原発を売り込もうと躍起になっている。震災から約5年が経過し、「歴史の教訓」を忘れるように国内でも関西電力の高浜原子力発電所、九州電力の川内原発は再稼働に向かっている。十分な安全性が確認されないままに、再稼働に踏み切るのは政治の暴挙と言わざるを得ない。

 こうした内外の動きからはっきりするのは、温暖化を巡る議論は所詮、二酸化炭素を都合の良い悪者に仕立てた政治ゲームにすぎないということだ。我々日本人は、空気に支配されやすく、環境を錦の御旗とする通説にひれ伏し、自ら考え、判断することを避けていないだろうか。

 COP21やIPCCの議論を見ても明らかなように、私たちが通説を疑わず、ただ盲信して受け入れれば国・地域の政策判断や企業の経営を誤った方向に導いてしまいかねない。通説こそ、疑う姿勢が必要なのだ。そこから議論が芽生え、新たな解決策が導かれていくことだろう。

日経ビジネス2016年1月18日 98ページより目次

この記事はシリーズ「賢人の警鐘」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。