豆腐事業者が年間500カ所のペースで減少し、10年前に比べ4割減まで落ち込んだ。小売業者との不利な取引で経営が立ち行かなくなっている。複数の組合組織が存在するなど業界の足並みもそろわず対策が後手に回った。

[全国豆腐連合会代表理事]
齊藤靖弘氏

1941年生まれ。高校卒業後、豆腐製造を営む家業の「斉藤商店」(富山県高岡市)に入社。35歳から社長を務める。全国豆腐連合会は2013年、3つの団体を統合し、一般財団法人として設立。代表理事に就任し現在に至る。

SUMMARY

豆腐業者廃業の概要

低価格競争による業績の悪化や経営者の高齢化などの影響で豆腐業者の廃業が相次いでいる。厚生労働省によると豆腐を製造する事業所数は2016年度末時点で6971と10年前の06年度末に比べ4割以上減った。こうした状況を受け、17年3月、農林水産省はガイドラインを出して小売業者との不当取引の是正に乗り出した。

 豆腐業者は厳しい状況におかれています。事業所は年間500カ所のペースで減っており、2016年度末にはついに7000カ所を割り込みました。スーパーやドラッグストアでの豆腐の安売りが常態化した結果、豆腐業者間の低価格競争が激化しました。適正な利益を出せず店をたたむところが多くなりました。経営者の高齢化も進み、事業者は今後もまだまだ減っていくでしょう。

 業界団体のトップとしては大変残念な状況であり、消費者の方々に対しては申し訳ないと思っています。

 豆腐はもともと、日持ちせず形が崩れやすいことから長距離輸送には向きませんでした。また、冷蔵保存が義務付けられてきました。そのため販路拡大が難しく「街の豆腐屋」など零細、小規模な事業者が多く存在してきました。

 こうした事業者はかつて自ら店頭売りをしていましたが、地域のスーパーに卸す形で販売量を増やすようになります。ここまでは大きな問題はありませんでした。

 環境が悪化したのは、全国チェーンの大手スーパーが地方に進出し、地域のスーパーと熾烈な安売り合戦が繰り広げられるようになってからです。豆腐は納豆や牛乳、卵などとともに客寄せの目玉商品になってしまいました。

 目的は客寄せですから大手スーパーとしては豆腐で利益を出す必要は特にないわけです。数年前からはドラッグストアも、生鮮食品を客寄せ目的で販売するようになりました。ドラッグストアは利益率が高い医薬品を販売していますから、食品スーパー以上に「食品は赤字でもいい」と考える業者も少なくありません。通常1丁(300g)で100円程度の商品を15円で販売する不当廉売も散見されたほどです。

 小売店が安売りすれば、豆腐業者に対する買い取り価格にも値下げ圧力が増します。豆腐業者も生き残るため必死ですから、取引を切られないため小売店のバイヤーの言いなりになって無理な要求にも応えざるを得ない状況に陥っていきました。

 値下げ圧力に加え、小売店の物流センターへの納入にも苦労しています。以前は豆腐業者が小売店に商品を納入していましたが、小売店がチェーン化して独自に物流網を持つようになり、豆腐業者は小売店の物流センターに一括納入するようになりました。この仕組み自体は問題ありません。ですが、物流センターを利用することで、本来は小売店側で費用負担すべき製品の収納コンテナの代金を求められたといった話が豆腐業者の間でよく聞かれるようになりました。

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