全3208文字

 その2つのはざまで、どうするかを相当悩みました。しかし松本さんの意見を聞く中、「将来の見通しが各子会社の買収当初と少しでも変わってきたのであれば、その状況を受け入れて、行動も変えないといけない」と考えるようになりました。下方修正、M&Aの凍結、子会社の立て直しという今回の発表につながっていきます。

 1年程度なら、業績の厳しさを顕在化させずに経営を進めることはできたと思います。例えば今回、業績修正で大きな赤字の見通しとなったワンダーは主力のレンタル事業は黒字でした。在庫評価を厳しく見積もり、特別損失を計上した結果、赤字となったのです。

 このため、下方修正を発表する直前まで、ワンダーの役員と、私や松本さんらRIZAPグループ経営陣との話し合いはかなり紛糾しました。向こうも上場企業ですし、在庫評価を含めて会社の価値をしっかり見ているという自負も当然あったと思います。

 ただ私の意見は変えませんでした。現状を正しく認識し、会社の未来を良くするための決断でしたので。

予想以上の反響だった

 そして11月14日の決算発表の場に至ります。テレビや新聞、雑誌など各メディアに大きく報じられました。当然、下方修正なので投資家の方々には十分な説明が必要とは思っていましたが、メディアにここまで大きく取り扱われるのは想定外のことでした。

 大きく報じられたのは「負ののれん」という言葉です。これは買収した企業の買収額が企業の時価の純資産額を下回った場合、その差額を利益として計上するものです。営業利益を見ると、17年度の実績や18年度の見通しの約半分にこの負ののれんが含まれていることから、「RIZAPは負ののれんで収益を膨らませていた」といった報じられ方をするところもありました。

「経営者は結果がすべて」と語る瀬戸社長。グループ立て直しに精力を注ぐ(写真=竹井 俊晴)

 しかしこれは実態とは異なります。確かに、通常の買収は企業価値よりも高く買うことがありますが、これは買収先の経営が順調で毎年キャッシュフローや営業利益がもたらされるという前提があるからです。一方、RIZAPグループが10年ほど前から手掛けてきた買収の多くは赤字企業が対象で、企業価値より安く買収し「負ののれん」を使って、買収した企業を立て直し、企業価値を向上させていくものです。もともと実践していた買収スタイルであり、負ののれんで利益を大きく見せる目的があったわけではありません。

 この手法はこれまでは順調であり、買収企業の多くはRIZAPグループの成長に大きく貢献してくれました。過去には、豆乳クッキー事業が危機に陥った時に、買収した美顔器の会社が年間70億円を売り上げてくれてグループを救ってくれたこともあります。

日経ビジネス2018年12月24日・31日号 100~101ページより目次