都会で増えてきているビル型納骨堂の最新施設が課税の対象になった。通常、「非課税」で通るはずの宗教施設だが、東京都は「ビジネス」と判断。納骨堂を建設・運営する寺院側は「不公平」とし、都を相手に提訴に踏み切った。

[伝燈院赤坂浄苑館長]角田 賢隆氏
1979年福島県生まれ。駒沢短期大学仏教科卒業。18歳の時、叔父で伝燈院住職・角田徳明師に弟子入りし、得度。2006年に大本山総持寺に入山。翌年に成満し、曹洞宗教師になる。2013年、伝燈院別院である赤坂浄苑の落慶とともに館長に就任した。伝燈院副住職。

伝燈院赤坂浄苑の課税係争の概要
曹洞宗伝燈院(石川県金沢市)は2013年、都内で2カ所目となる別院でビル型納骨堂「赤坂浄苑」を完成。約3700基を全自動で収納できる納骨堂や本堂、ロビーラウンジなどを備える。今年に入り都は「無宗派の納骨堂は宗教行為とは言えない」などとして、固定資産税と都市計画税計約400万円の納税を要求。同院は7月、都に課税の取り消しを求める訴えを東京地裁に起こした。

 伝燈院は現在の住職で44代目になる古刹です。本院は石川県金沢市にあります。在家出身である叔父が住職を拝命した1988年当時、伝燈院は無住(空き寺)でした。檀家も30軒ほどしかなく、本堂は傾き、つっかえ棒がしてあったそうです。しばらく当地で活動をしておりましたが、その檀家の数では到底生活はしていけません。

 そこで叔父は東京・元麻布に進出し、別院の建立を計画します。96年、六本木ヒルズにも近い場所に麻布浄苑が落慶。ここはロッカー式の納骨堂が特徴で、約1500基あります。都会では昨今、ロッカー式の永代供養墓が増えてきていますが、伝燈院はそのはしりと言えるでしょう。

 そして2013年、都内で2番目となる別院、赤坂浄苑が完成、私が館長に就任する運びになりました。赤坂浄苑は(東京メトロの)赤坂見附駅から徒歩2分という、好立地にあります。しかも最新設備を誇っています。

全自動の永代供養墓

 赤坂浄苑の特徴は、ロッカー式をさらに発展させた、全自動で遺骨カロートが運ばれてくる「搬送式」です。参拝ブースの前で、利用者がICカードをかざすと扉が開き、焼香台が出てきます。正面には黒御影石で家名や家紋が刻まれた銘板が置かれ、高級感にあふれています。

 都会の生活スタイルに合わせた供養が、ここでは可能になります。一般の墓のように生花も線香も用意することはなく、掃除の必要もありません。利用者は午後9時までお参りできます。仕事が終わった後にも気軽にお墓参りできるのが魅力です。

 基本的な価格設定は1区画150万円。そこに永代使用・供養料、銘板の彫刻、戒名授与などの料金が含まれています。全3700基の販売を予定し、現在1000基ほどが売れています。

 販売は仏壇・仏具販売で有名な「はせがわ」に委託し、契約に応じてマージンを収める仕組みです。

 バブル期以降、都市近郊に大規模墓地が続々登場し、お墓を持たない次男以降の夫婦や、田舎から都会への改葬を求める方々がこぞって買い求めました。ところが墓守をする人間が高齢になりつつあり、郊外まで足を運ぶのはなかなか大変です。

 今、郊外型の外墓地から、こうした都心のビル型永代供養墓へと改葬する事例が増えてきています。現在、都内でロッカー式や搬送式の永代供養墓が7万基ほどあると言われています。社会のニーズがこうした近代設備の永代供養墓に集まっているのは確かです。

 核家族化、少子高齢化が進み、供養のあり方が大きく変化してきています。「寺院消滅」と言われる中、寺も世の中のニーズに合わせていかなければ、生き残っていけません。

課税措置はフェアではない

 ところが、赤坂浄苑が落慶し、宗教法人としての非課税申請をした後、東京都の調査が入った際に、「今回は宗教活動とは見なさない」という通告を受けました。

 そして納骨堂の不動産、他宗のお坊さんがやってきて供養する場合の副本堂などに対する固定資産税と都市計画税、年間にして計約400万円を納めるよう、求められたのです。

 宗教法人には、非課税の部分があります。宗教活動から生じる所得については法人税が免除されています。宗教施設などの不動産には、固定資産税や相続税が免除されます。しかし、赤坂浄苑だけは「ダメ」という判断でした。

 理由は、宗派宗旨を問わず、多くの人を受け入れている点。さらに民間事業者であるはせがわに販売委託している点などが根拠だと言うのです。他宗のお坊さんが読経を行うための副本堂も、「レンタルスペースと同等」と見なされて、課税されました。

 ちなみに元麻布の別院にある無宗教ロッカー式永代供養墓は、非課税として今でも認められています。ロッカー式は非課税なのに、搬送式が課税されるというのはよく分からない理屈です。最新型だから課税するということなのでしょうか。

 また、宗派を問わず受け入れている点に関しても、全国にある無宗教霊園の墓地は非課税です。「供養してほしい」という故人や遺族に、広く応えることこそが、宗教行為ではないかと考えます。

 叔父である住職は「これも時代の流れだ。公益のために税金が使われるのであればやむを得ない」と申しております。それが、同じようなスタイルでやっている宗教法人に対し、一斉に課税するというのであれば、分からなくもありません。私の知るところ、搬送式で課税されたのは当方が初めてです。これではフェアとは言えません。

 年400万円の出費は軽くありません。維持・管理費を年1万8000円頂いていますが、利用者の一部からは「値上げするのか心配」という声が上がり始めています。課税されたからといって、その分を料金に転嫁させることはできないでしょう。

 利用者が快適に、この空間を使っていただけるようにコーヒーサーバーを置き、5人のスタッフを配置しています。今後も従来のようなサービスが提供できるか、頭を悩ませています。

 そうした中、本望ではありませんが2015年7月、都に対して異議を申し立て、課税取り消しを求める訴えを東京地裁に起こしました。裁判所の判断次第で、この宗教課税の流れが全国に波及していく可能性に、私は大きな危惧を抱いております。

<b>東京メトロの赤坂見附駅の近くにある伝燈院赤坂浄苑。手前の看板のある工事現場では、別の仏教寺院がビル型納骨堂を建設中。赤坂浄苑の最新型納骨堂を操作する館長の角田賢隆氏(右上)</b>
東京メトロの赤坂見附駅の近くにある伝燈院赤坂浄苑。手前の看板のある工事現場では、別の仏教寺院がビル型納骨堂を建設中。赤坂浄苑の最新型納骨堂を操作する館長の角田賢隆氏(右上)
東京都主税局の話

 守秘義務があり、個別の案件には答えることができない。当該法人の固定資産税が非課税に当たるか当たらないかは、地方税法348条第2項3号の「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」に該当するかどうかを1件1件確認して、判断した。「本来の用」とは「宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成すること」と規定している。宗教法人が「本来の用に施設を使用していない場合」には、課税対象になる。

日経ビジネス2015年12月21日号 120~121ページより目次

この記事はシリーズ「敗軍の将、兵を語る」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。