アデランスがTOBを実施し、上場廃止に向かっている。目的は株価に左右されず、長期的な視野で大型投資を実施するためだ。海外や毛髪医療分野も拡大し、将来の成長につなげる。

[アデランス 代表取締役副社長 COO] 津村佳宏氏
1963年生まれ。82年アデランス入社。2009年執行役員、2013年取締役を経て、2015年から代表取締役専務取締役。2016年5月から現職。TOBが成立すればMBOを実施し、社長と合わせて50.1%の株式を保有する予定。
アデランスTOBの概要
経営の自由度を高める目的で、10月17日から11月29日までインテグラルの子会社であるアドヒアレンスによるTOBを実施している。普通株1株620円で買い付ける。成立すれば上場廃止となる見通し。その後、アデランスの根本信男社長と津村副社長がMBO(経営陣が参加する買収)によりアデランスの株式の50.1%を保有する予定。

 TOB(株式公開買い付け)やMBO(経営陣が参加する買収)は株価に左右されず、長期的な視野に立って安定した成長をするために実施しています。ただ上場廃止ということで、長年私たちを支えていただいた株主様に対して、本当に申し訳ないと思っています。

 TOB発表後の報道ではウィッグなどかつら市場全体が厳しいための再建と書かれましたが、実情は違います。どんな背景があってTOBをするのか、事業をどうしていくのかをお話しします。

 TOBを考え始めたのは7月ごろ。直近の株価低迷がきっかけでした。そのころには株価が400円台に低迷し、時価総額が200億円を切っていました。

 昨年度の売上高は過去最高で790億円ほどで、事業としては順調に伸びていました。ただ営業利益や経常利益がよくなかった。売上高がよくても営業利益や経常利益が低いと株価が低くなってしまいます。

 なぜ利益が出にくいのか。その理由の一つは海外のM&A(合併・買収)です。これまで海外での成長を図るためにM&Aを進めてきました。米ヘアクラブやフランスのアニーダブレーがその代表例です。買収するとのれんの償却など様々なコストが計上されます。必要とはいえ、業績の足を引っ張ることになります。

 もう一つは為替の問題です。先ほどの海外企業の買収などもあり、実はアデランスの売り上げは約半分が海外のものになっています。特に米国の事業は大きく、想定レートよりも円高が進むと、為替差損がでてしまいます。

 事業構造もあります。国内の女性向けのウィッグは今まで、百貨店や直営店を中心に高級品を展開してきましたが、最近はイオンなどいわゆるGMS(総合スーパー)で買ってもらえる機会も多いと分かってきました。

 GMSでは、恒久的なウィッグというよりは、やはりカジュアルラインのウィッグが販売に向くということがあります。そうした商品の開発に加え、新たに店舗の展開にも力を入れねばなりません。50店舗以上をある程度短期間で出店することを進めています。各店舗での雇用も必要になりますし、費用がどうしてもかかります。

 またウィッグはまずお客様を新規で集めて、リピート客になってもらい、ウィッグのメンテナンスなどで収益を上げる長期的なモデルです。結局、店を出してすぐ黒字というわけではないのです。そうすると投資して数年間の利益率というのは高くならない。

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