熊本の老舗ラーメン店「こむらさき」が7月31日に本店を閉店した。熊本を代表するソウルフードを苦しめたのは、ニンニクをはじめとする原材料費の高騰。人手不足が深刻化する中、コスト増から十分な人件費を捻出できず、苦渋の決断を余儀なくされた。

[熊本ラーメン社長]
山中 禅氏

1952年生まれ。80年ごろ、家族が経営する熊本ラーメンの前身の有限会社こむらさきに入社。88年に熊本ラーメンを設立し、社長に就任。通販事業やコンビニエンスストア向けカップラーメンなどを手掛けてきた。65歳。

SUMMARY

「こむらさき」本店閉店の概要

「こむらさき」本店は、1954年に創業。3年後に現在の場所に移り、営業を続けてきた。しかし、2016年1月から人手不足が原因で休業に追い込まれた。その後、1年間にわたって、人材募集を続けてきたが、熊本地震の復興需要などで人は集まらず、原材料費の高騰もあり16年暮れに閉店を決意。17年7月31日をもって、63年間の歴史に幕を下ろした。

 当社は1954年に創業した熊本ラーメンの店です。創業以来、営業を続けてきた本店を2017年7月31日に閉店しました。県外からのお客さんを呼び込むために、当社にとって知名度のある本店は必要な店舗でした。皆様に愛された本店の閉鎖を発表し、多くの方から驚きのご連絡をいただきました。ご心配をお掛けしました。

 本店を閉店する大本の背景にあるのは、人手不足です。実は、熊本地震が起きる前の16年1月から本店は休業していました。人が足りなくなり、1年間ずっと募集をかけていましたが、なかなか確保できませんでした。採用さえできれば、すぐにでも店を再開できましたが、どうしようもありませんでした。閉店を決めたのは、昨年の暮れぐらいです。

地元の時給上昇についていけず

 特に集まらなかったのは、昼間のパートさんです。いま熊本市では時給が上がっていて、ついこの間まで時給は700円ちょっとだったのが、いまは800~900円になっています。我々が採用したい主婦の方は、コールセンターに流れているようですが、時給1000円で募集しているそうです。それに対し、私どもが提示していた時給は、例えば研修期間が明けたバイトの場合で、750円でした。

<span class="fontBold">本店には閉店を知らせる張り紙が</span>
本店には閉店を知らせる張り紙が
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 もっとバイト代を上げれば、あるいは人材を確保することができたかもしれません。しかし、当社には、それができない経営的な問題がありました。原材料価格の上昇です。

 痛かったのがニンニクです。10年前は1kg当たり300円だったのが、今年は1600円ぐらいまで高騰しました。とはいえ、原価が上がっているからといってラーメンの値段をおいそれと上げるわけにはいかない。こうした状況で、バイト代を上げようと思ったら、とても大変です。

 もっとも、現在の時給でも全く応募がなかったわけではありません。しかし、その場合、来てくれる方の人材の質は高いとは言えませんでした。

 特に、少子高齢化の影響なのでしょうか、今の若い子の中には、コメや皿の洗い方から教えないといけない子も少なくありません。家庭で一般的な常識を全然、教えていないのでしょう。

 優秀な人材を雇おうとすると、バイト代を上げるしかないが、原材料の高騰でそれができない──。そんな構図は飲食業界全体のものではないでしょうか。

 東京の同業者も求人が困難になってきていると聞きます。熊本ラーメンは、熊本を代表する食べ物の一つですが、そんなブランド力も、人手不足と原材料高騰には勝てませんでした。

 結局、自社ビルである本店を閉店し、貸した方がいいとの結論にたどり着きました。ちょうど店舗の設備が不調だったことも苦渋の決断を後押ししました。休業のままでは収益はありませんが、貸せばゼロよりは上ですからね。改装して店をやりたいと考えている若い人に貸す予定です。若手のチャンスの場として使ってもらえるなら、本店があった商店街の地域貢献にもつながるとも考えました。

 今後は、本店から歩いて5分ほどのところにある上通中央店(熊本市中央区)と、新横浜店(横浜市港北区)の2店舗の経営に集中します。2店舗体制になることで会社の先行きを心配する声もあるかもしれませんが、ここへきて利益率は改善しているんです。本店に来ていたお客さんが上通中央店に来てくれるようにもなりました。

 様々なコストが上昇する中、中小企業はコスト削減の余地を探すのはかなり厳しい。だから、最近ではデパートの催事の引き合いなども受け、売り上げを伸ばすようにもしています。大阪や名古屋、福岡などあちこちからオファーがあり、催事では1時間で120杯もラーメンを売ることができます。1日にすると、600~700杯になります。

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