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ふるさと納税の返礼品に期間限定で旅行券を採り入れたところ、寄付金が前年度の150倍に急増。その後、総務省からの通達などを受けて、返礼品として旅行券を用意することを自粛した。今後については、全国の市町村の動向を見ながら総合的に判断していくと話す。

[神奈川県寒川町長]
木村 俊雄氏

1949年神奈川県寒川町生まれ。法政大学卒業後、同町役場に入庁。総務部長、企画政策部長などを経て、2011年から現職。現在2期目を務めている。同町は神奈川県の内陸部に位置し、人口は約4万8000人。

SUMMARY

寒川町ふるさと納税急増の背景

ふるさと納税は、納税者が自治体に寄付する場合、寄付金から自己負担分2000円を引いた額が、所得税や住民税から控除される仕組み。一方で、寄付金集めに自治体の返礼品競争が激化し、返礼品の転売なども問題になっている。旅行券目当ての寄付金が殺到した寒川町は4月から旅行券を自粛。9月には野田総務大臣が制度見直しの検討を表明した。

 寒川町はふるさと納税に対する返礼品として今年3月、寄付金の5割に相当する旅行券を1カ月限定で採り入れました。その結果、寄付金は前年度の約150倍に急増しました。

 しかし、4月にふるさと納税のあり方をめぐって総務大臣名で新たな通達が出たことなどから、旅行券の自粛を決めました。一連の出来事を振り返り、いささか行き過ぎもあったと考えていますので、事情をお話しさせていただきます。

SNSを通じて情報が拡散

 3月に旅行券を返礼品として用意してから限定期間が終わるまでの1カ月、私は職員から1週間単位で寄付金の額や件数について報告を受けました。これほど寄付金が集まるとは想像していなかったため、驚いてその推移を見ていました。

 2017年度に集まった寄付金は最終的に約15億円となりました。16年度が約1000万円でしたから、大幅増です。返礼品は旅行券以外も用意していましたが、旅行券が総額の約96%を占める結果となりました。

 なぜこれほど寄付が集まったのか。いろいろなご指摘はあるかと思いますが、町として正確な理由はよく分かっていません。3月の時点で寄付金の5割相当という返礼品の比率が飛び抜けて高かったかといえばそうではありませんし、旅行券を返礼品として用意している自治体も以前からありました。

 しいていえば、他の自治体とは受け付けの時期が違いました。期間限定返礼品付きのふるさと納税は年末の受け付けが多かったのに対し、寒川町の場合、3月の受け付けに限定して返礼品に旅行券を加えました。

 ただこれは、2月に町のブランディング関連の発表を実施し、これを記念してたまたま3月になっただけで、特別な意図があったわけではありません。SNS(交流サイト)を経由して話題になったと聞きましたが、それも口コミで自然に情報が広がった印象です。

 多くの反響を頂いたものの、4月以降、返礼品として旅行券を用意することは自粛しました。総務大臣名で「地方団体の区域内で生産されたものや提供されるサービスとすることが適切」「返礼割合が3割を超えるものは、他の地方団体に対して好ましくない影響を及ぼす」との通達が出たためです。

 総務省はそれ以前の17年4月にも寄付金に対する返礼品の金額を3割以下にするように通達を出しています。このため「もっと早く返礼比率の引き下げを判断できたのではないか」との指摘もあるかと思われますが、この通達の後、野田聖子総務大臣の「自治体に任せるのが当然」との発言もありました。

日経ビジネス2018年10月8日号 86~87ページより目次