宇宙の成り立ちを解明するために300億円をかけて2月に打ち上げられた天文衛星「ひとみ」。しかし3月に異常な回転を始め、制御機構の不具合が露呈するなどして運用不能になった。JAXAは徹底した原因究明を進めるとともに、後継機を計画して再挑戦を誓う。

[JAXA 宇宙科学研究所 所長] 常田佐久氏
(写真=北山 宏一)
1954年生まれ。83年東京大学大学院理学系研究科天文学専門課程博士課程を修了。95年国立天文台教授、2005年同先端技術センター長を経て、2013年から現職。人工衛星を使った天文学・太陽の研究が専門分野。
天文衛星「ひとみ」失敗の概要
2016年2月17日に打ち上げられたひとみは、本番運用へ移行する目前だった3月26日に不具合から異常な回転を始めた。回転を止めて姿勢を制御させる仕組みも複数あったが、どれもうまく機能しなかった。その後、回転によって生じた遠心力で衛星の電力を確保するための太陽電池の部分が破断。電力を失ったことで運用不能になった。

 天文衛星「ひとみ」は、ブラックホールや銀河団から発せられるエックス線やガンマ線を観測するものでした。観測によってこうした場所で起こっている現象をとらえて分析することで、宇宙の成り立ちを解明する重要な材料をもたらすはずでした。

 開発は日本だけでなく米国の米航空宇宙局(NASA)などとの共同プロジェクトで、日本の負担分だけで300億円という非常に大きい費用をかけて開発されたものでした。しかし不具合により運用ができなくなりました。大変申し訳ないと思っています。

 その後、ひとみに何が起こったのか、直接的な原因を調査したことに加え、関係者全員に聞き取り調査をしてなぜ防げなかったのか、今後にどう生かしていくかを宇宙航空研究開発機構(JAXA)としてまとめて「X線天文衛星ASTRO-H『ひとみ』異常事象調査報告書」として公表しました。