全国農業協同組合中央会(JA全中)の会長選の開票が7月5日に行われ、中家徹氏が内定した。敗れたJA東京中央会・連合会の須藤正敏会長は「私の提言が改革の突破口になれば」と話す。農家の課題ではなく、国民を巻き込んだ食品自給率維持の問題にしたいと考える。

[JA東京中央会・連合会会長]須藤正敏氏
1948年生まれ。1987年三鷹市農協青年部長。2008年JA東京むさし代表理事組合長。15年JA全中代表監事(現任)、JA全国共済会会長(現任)。自身も農家でオリーブやシラカシなどを育てている。

JA全中会長選の概要
全国農業協同組合中央会が開いた会長選でJA和歌山中央会会長の中家徹氏が新会長に内定した。8月10日の臨時総会を経て就任予定。全国の代議員251人による投票で中家氏が152票を獲得。JA東京中央会・連合会会長の須藤正敏氏は88票だった。中家氏は前回の会長選にも立候補し、現在、全中理事を務めるなど知名度を生かし選ばれた。

 全国農業協同組合中央会(JA全中)の会長選に立候補し負けました。新会長に内定した中家(徹氏、JA和歌山中央会会長)さんと違って知名度が低かった。251人の代議員のうち、せいぜい50人ほどしか私のことを知らないと思います。そのなかで88票も得られた。短期間で私の考えに多くの仲間が賛同してくれたことに感謝しています。負けて悔しいというよりも、改革の突破口が見えてきたという気がしています。

 私は日本の農業が将来どうなってしまうのかという危機感から立候補しました。国会などで農業に関することが議論されていますが、国民の皆様も巻き込まないと将来が危ういと考えます。

 このままの状態が続けば、15〜20年後に農業は崩壊しかねません。若い世代にバトンタッチできていないからです。私のような60歳代後半の世代が農業を支えています。私は東京・三鷹で300年以上前から農業を営む家で育ちました。幸い私は息子が継いでくれていますが、成り手不足は深刻です。

<b>地方に広がる田園風景。農業は危機的な人手不足に直面している。後継者も不足し、須藤氏は15~20年後には農業が崩壊しかねないと指摘する(写真はイメージ)</b>(写真=読売新聞/アフロ)
地方に広がる田園風景。農業は危機的な人手不足に直面している。後継者も不足し、須藤氏は15~20年後には農業が崩壊しかねないと指摘する(写真はイメージ)(写真=読売新聞/アフロ)

 後継者不足に悩む理由は収入が低いことに尽きます。解決策としては子供に十分な教育ができ、それなりの家に住めるような収入を得られるようにするしかありません。農家は天候不順になると、収入が激減してしまいます。一般的なサラリーマンほどの収入を保証してもらえれば、農業に従事してもらえる若い人が増えると思っています。実際フランスや英国は農家に対し所得の保障をしています。

 こういう話をすると、「農家のエゴだ」とよくいわれてしまいます。でも考えてみてください。農業は国民の皆様の食を支える事業です。我々農家は旬の野菜や新鮮な米をお届けする使命感をもって働いています。このまま成り手不足で農業が成り立たなくなれば、食の安全が危ぶまれます。

総合農協の枠は守るべき

 もし地球規模で干ばつが起きてしまったら、どうなるのでしょうか。農業大国も自国の需要を優先するでしょう。ましてやトランプ米大統領のように自国主義の方が政権を握る国もあり、輸入に頼る日本は対応策を考えなければなりません。皆様の食卓にも大きな影響が出てしまいます。

 国民の皆様に食料自給力の確保という視点で理解してもらえるようJAの役割を変えるだけでなく、我々自身の目線を上げる努力が不可欠です。

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