政策的なことを言うと、現職と大きな違いはなかった。問題は、職員や県民をどう元気にするかというモチベーション。それはトップの言葉の力なんですよ。石原慎太郎さんしかり、田中康夫ちゃんしかり、橋下徹さんだってそう。トップの言葉の力は職員や有権者のモチベーションにつながる。

 けれども、現職の方は言葉が死んでいるというか、どう見たって自分で書いていないの。チラシにせよ何にせよ、職員の作文なわけ。対して私は作家だから、言葉だけは力があるつもりだったので、「明るく楽しい兵庫県」という目標を掲げて、訴えてきました。

 野党が駄目なのはつらい顔をしてつらさばかり訴えるところ。やらなきゃいけないことはたくさんある。それをどうやるかが大事で、つらいことでも明るく楽しくやればいいんですよ。

 例えば、僕は政策目標の一つに教育の底辺を広げることを訴えてきた。雑用など初等教育の先生の負担を減らして教育に専念してもらうとか、(貧困家庭の子どもに食事を提供する)「子ども食堂」を支援するとか、そういうことをちゃんと書いていました。

 子ども食堂のいいところは、施しではなく、楽しくやっているじゃない。それが、明るく楽しい兵庫県なんですよ。福祉とかああいう言葉は大嫌いで、みんな助け合えばいいじゃんって。だけど、人々の心に届かなかったな。

 今だから言うが、資金はあった。人気はないが、カネならある。今回の選挙で、サラリーマンの生涯賃金の半分くらいを費やしました。実家の資産は指一本触れてない。だって俺、相続放棄しているもん。全て、筆一本で稼いだ。だから、日本で最も成功したライターだと思うよ、俺は。

 けれども、もう使うあてないじゃん。家は5軒ぐらいあるし、家族もいないし、残す相手もいないからさ。選挙くらいしか使い道がない(笑)。そういう無欲の人間に面白い連中が集まってくる。それが今回の選挙スタッフだよね。

イメチェンは最大の失敗

 ただ、相手には組織を維持している膨大な金があるわけで、そういう意味では、総合力で体力的にかなわなかった。負けた翌日、ツイッターに「力もカネも根性も足りなかった」と書いたけれど、それはやっぱり、そうですよ。

 よく64万票も取ったと思うよ。だけどその先にあるのは、もう叩いても壊れない組織票というやつなんですよ。これは根本的な問題で、日本の政治を根底から狂わせているのはこの組織票だと思いますね。組合員であるとか、会社員であるということで投票行動を規定されるのはおかしい。まだ日本人はそんなものに縛られているのかなと、悲しくなるよね。もうちょっと、自由でいいんじゃないかな。

 ただ、自民党を中心とした保守というものと今の保守とは、大きな差があると感じました。僕はずっと「利権談合共産主義」と言ってきたが、必ずしもその人たちが1つにまとまったために負けたのではないと思う。やっぱり僕の訴える力が足りなかったんだろうな。

 あと、「イメチェン」は今回の戦略の最大の失敗。訳が分からないうちに髪を切られ、スーツを着させられ、写真も撮られて。結果、誰だか分からない。だけど陣営は大まじめにそうさせた。僕も選挙って全く知らない世界だからさ、そういうものなのかなと思うじゃない。でも大間違いだと思うよ。このままでさ、普通にやればよかったんだよ。

<div class="txt-box">トレードマークのサングラスとジーンズを捨て、風貌を変えた勝谷氏の姿はネット上でも話題に(写真=日刊スポーツ/アフロ)</div>
トレードマークのサングラスとジーンズを捨て、風貌を変えた勝谷氏の姿はネット上でも話題に(写真=日刊スポーツ/アフロ)

 まあ、でも締めは「ああ、楽しかった」だよ。後悔は全くない。

 スタッフも若い子たちがよくやってくれて、奇麗な女性もたくさん集まってくれて、よかったなという記憶しかないね。閣僚級が引きも切らず相談に来る政治コンサルタントの高橋茂さんも、参謀長としてうちの選対本部にいたわけだし、まあ、やることは全部やったということだね。「宇宙戦艦ヤマト」の艦長が最後に言う、「何もかも皆、懐かしい」という心境だよ(笑)。

 今後については、分からない。人生、その日の朝、起きた気分で決めているから。ただ、あともう1回、選挙ができるくらいの資金はあります。

 もういいだろうインタビューはこのへんで。ちょっと飲みに行こう。日経ビジネス的に、尼崎の「立ち飲み経済」は、とても参考になると思うよ。

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