ウミガメの保護・調査で専門家から高く評価されてきたNPO法人が解散を決定した。背景には、人手不足の深刻化によってスタッフが集まらないほか、若者の「気質」の変化もある。代表は、活動停止によって将来、ウミガメが激減することに対し強い危機感をにじませる。

[NPO法人屋久島うみがめ館代表]
大牟田一美氏

1950年鹿児島県生まれ。高校まで屋久島で過ごした後、東京農業大学に進学。80年に帰島。屋久島ウミガメ研究会を85年にスタート。以降、33年間にわたり保護・調査活動を展開するも、様々な事情から今年3月、年末での解散を決めた。

SUMMARY

ウミガメ保護団体の解散の概要

NPO法人屋久島うみがめ館は、アカウミガメの産卵地として世界的に知られる屋久島で長期間、保護・調査活動を実施。研究者から高く評価されてきた。しかし最近では人手不足などによってスタッフが集まらなくなるなど、活動の継続が難しくなり、年末に33年の歴史に幕を閉じることを決めた。今後の調査・保護活動を危惧する声が関係者の間で広がっている。

 ウミガメの保護調査活動を33年間続けたNPO法人屋久島うみがめ館の年末での解散を決めました。代表を務める私は将来、ウミガメが激減するのではないかと危惧しています。

 屋久島の永田浜は、絶滅危惧種に指定されているアカウミガメの北太平洋最大の産卵地です。私はこの浜の近くで生まれ育ちました。5~7月の夜、ウミガメは上陸して産卵。8~9月にふ化した子ガメが海に向かいます。

 人工光が産卵のための上陸を妨げることから、私やスタッフは一晩中、月や星の明かりだけを頼りに巡回し、卵を安全な場所に移すなどの保護活動と、上陸数やふ化数などを記録する調査活動を続けてきました。展示施設には2017年は約1万1000人が訪れました。

月給倍でも人を確保できず

 シーズン中、浜での活動は台風や雷でない限り休みません。識別用タグも使い、集めたデータには連続性と精度があると自負しています。東京大学とも共同調査を実施しており、研究者から評価されてきました。

 にもかかわらず解散を決めた理由の一つは、スタッフが集まらないことです。組織を01年にNPO法人化して以降、生活面を考えてスタッフに給料を支給し、社会保険も負担してきました。月給も当初の10万円から最高20万円まで増やしました。それでも適任者が見つかりませんでした。

 活動自体に興味を持つ人はいますが、スタッフの役割はボランティアの応対からデータの更新まで多様です。中には優秀でやる気のある人もいますが、そうした人は企業も欲しい人材。いざとなると給料面などがネックとなりなかなか確保できません。東京や大阪など大都市から遠い屋久島も、世の中の人手不足と無縁ではないのです。

 スタッフが集まらないのは、若者の「気質」の変化もあると思います。何というか、以前より「1つの場所で頑張れる若者」が減った気がします。「きちんと仕事をしてほしい」という思いから昔は厳しく指導したこともありましたが、今はできません。

 解散には私の体調面の事情もあります。私の本業は農業でグアバ茶の栽培をしていますが、去年までシーズン中は、毎日午後9時に浜に出て夜通しでNPOの仕事をしていました。

 朝まで浜にいて自宅に戻り調査票をまとめながら朝食を食べ、寝るのは午前8時。4時間たたずに起床。日中は農作業することもあります。午後4時には前夜の調査を踏まえたミーティング。いったん事務所を出て自宅で夕食をとり、20分ほど仮眠して浜に出る……。そんな生活を続けていました。ウミガメにかまれた時も2カ月間、毎日医者に通いながら活動を続けたものです。

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