マニュアルがないから 職人が知恵を絞る 顧客の信頼を守り切る

(写真=山田 哲也)

 前身の「一澤帆布」が創業したのは1905年。初代の一澤喜兵衛がクリーニング店を営みながら、手に入れたミシンで職人向けに道具を入れるかばんを作り始めたのが始まりです。曲がりなりにも会社が110年以上も続いてきたのは、「無い無い尽くし」だったからじゃないですかね。

 ウチには専任のデザイナーもいなければ、営業部もありません。70人ばかりの小さな会社ですから、全員がかばんを作り、売ります。職人も売り場に立ちますから、お客さんの声をじかに聞きます。その声を生かして次の新作に生かします。スマートフォンが入るポケットが欲しいといわれたら、デザインを変える。ウチは大量生産していませんから、細かな改良は頻繁にしています。だから、かばん作りのマニュアルもありません。

 こんないいかげんな会社が生き残ってこられたのも生活に密着したかばんを作ってきたからでしょうね。氷屋さん、牛乳屋さん、薬屋さんの配達袋や大工さんや左官職人向けの道具入れなど、それぞれの用途に合わせて、丈夫で長持ちするかばんを作ってきました。