支社勤務で思い知った 本当の現場重視とは何か 理だけで人は動かず

(写真=村田 和聡)

 入社して以来、本社勤務が長く、初めて現場に出たのは45歳の時でした。新潟県の長岡支社に支社長として赴任したのです。県の半分ぐらいを所管していて、当時営業職員は約500人。内勤職員も含めると全部で600人ぐらいの支社でした。

 現場重視──。私はこう考えて長岡に向かいました。本社にいたときから「現場重視」「お客様のために」と言い続け、現場の大切さは十分理解しているつもりでした。しかし、実際に行って見るとがくぜんとしました。今まで自分が吐いていた言葉が、いかに皮相的で魂がこもっていなかったか、と。

 着任数カ月後くらいに、ある女性の営業職員と企業のお客様を訪問したときのことです。出かける直前に、何かお客様に頼みたいことがないか聞いてみました。せっかくの機会だから、この職員のために支社長として何かをしてあげたい。そんな義侠(ぎきょう)心からでした。

 それに対して彼女はこう言いました。「支社長としてあいさつだけしてもらえれば結構です」。私が食い下がると、「いや、本当に結構なんです。もう10年以上お付き合いしているお客様です。支社長は2~3年で代わると思いますが、私はこの先も長くお付き合いします。だからあまり成果を急がないでほしい。保険の話は一切しないでください」。きっぱり言いました。