経験値を結晶化させ、原理原則を後世につなぐ
それが「三方よし」

 あれは1995年の阪神大震災のさなかですわ。先代の親父が言うんです。「人間、こういう時に援助を差し伸べるもんや。取引先が倒産するかもしれないからといって、商品を取り返しに行ったりしてはならん。今、一番必要なのはタオル、せっけん、瀬戸物の食器や。タオルなんて雑巾代わりにいくらでもいる。すぐに発送しなさい」

(写真=菅野 勝男)

 私らもつい、「送ったって、すぐには着かんで。橋が倒壊してえらい時なのに」と言ってしまいます。でも、親父も譲らん。「そんなもん、腐るもんであるまいし。はよ送れ」

 結果的に、親父の言う通りでした。得意先から、「なんでこんなんのが必要だと分かったんや。ちょうどいるところだった」と喜ばれまして。これが近江商人ですわ。